Oh, bother!2

麦わらの一味と隻眼の女





いざ大冒険へ


朝、ウソップさんの大声で目が覚めた。寝ぼけ眼を擦りながら船へ向かうと、ボロボロだった船が修繕されていた。


「船が…!誰が修繕してくれたんです?」
「それがわかんねェんだ!でも、見たんだ俺は!誰かここにいたんだ!」
「でも元の形と何か違うみたい。羽とかありませんね」
「これが変形する前の元々の形なんだ。元の姿を知ってる奴だ…一体誰が…」


皆は不思議そうに修繕された船を見つめていたが、わからないものはわからないと各々冒険の準備を始める。私は元通りになったメインマストを撫でた。神官の槍で焼け焦げた跡は痛々しく残っているし、修繕をツギハギだらけで下手くそだが、ちゃんと直されている。


「……お礼が言いたいです。一体誰なんでしょうか」
「わからねェ…けど。ユナ、ありがとな」
「え?」
「船壊されたこと、めちゃくちゃ気にしてんだろ。でもお前のせいじゃねェよ。あいつらも責めたりしねェ、こうやって直ったんだし、気にすんな!」


にいっと笑うウソップさん。こんな時さえ気にかけてくれる。優しさに胸がいっぱいになった。


「…はい。優しいですね、ウソップさん」
「そうか?尊敬したんなら、俺をキャプテンウソップと呼んでも良いんだぞ!!」
「それは別にいいです」
「急に冷たいなお前!!」





探索チームと脱出チームに分かれて行動する、とナミさんは説明する。


「ユナはどうする?」


好きな方にしていいけど、と言うナミさんは黄金は欲しいが危険なのは避けたいので脱出チームだという。そうは言っても脱出チームも危険はつきもの。探索チームは黄金を探して島内を散策するらしい。


「ユナはもちろんこっちだろ!?なあ!冒険したいだろー!?」
「ユナもそっちに行くの?危ないわよ!?」
「脱出チームに来れば俺がちゃーんと守るぜ!?ユナちゃん!」


うーん、と葛藤する。冒険はしたい。二度と出来ない大冒険。でも、何より私は生きて帰らなければ。冒険と命を天秤にかけて、ぐらりと命に傾きそうになる。しかし、そのときゾロさんと目があった。


「めんどくせェな、迷うくらいなら来ればいいじゃねェか。命の保証はねェけどな」


そう言うゾロさんに同じく探索チームのチョッパーさんが慌てて言った。


「ないのか!?」
「ないだろ。死ぬつもりなんざ毛頭ねェが。…なんだ、怖ェのか?」
「こっ、怖くなんてねえよ!!おれも冒険するんだ!!」


ゾロさんが守ってくれるって、前に言ってくれたことを思い出し、ハッとする。万が一危険になっても、能力もあるし。冒険も命も、どちらもとればいいんだ。そう考えて、にっと笑った。


「私も冒険したいです!!」


そう答えた私に、ルフィさんは笑みを浮かべた。


「よし!!行くぞユナ!心配すんな、絶対死なせねェから!」
「はい!よろしくお願いします!」


ガッツポーズをとった。サンジさんは何故か泣く泣くお弁当を渡す。リュックはナミさんが貸してくれた。お弁当を渡す際、サンジさんが小さな包みを手にもって小さく耳を指差す。言われるままに耳を寄せると、こそっと耳打ちした。


「これ、昨日のバナナで作ったマフィン。ユナちゃんにプレゼント」
「わあ、私にですか?」
「昨日のお礼だよ。ユナちゃんの分しかないから、ナミさんとロビンちゃんには秘密だ」


ぱちりとウインクしてみせるサンジさんにドキッとしてしまうのも無理はないと思う。


「ありがたくいただきます、食べるのが楽しみです。私、サンジさんの料理すごく好きなんです」
「本当かい?光栄です、プリンセス」


嬉しそうに笑う仕草も紳士的だ。受け取ったバナナマフィンを大事そうにリュックに入れる。潰れないようにしなくちゃ。


「気をつけて、ユナちゃん。ケガでもしたら大変だ。俺が守ってやりてェとこだが……」
「大丈夫です、ゾロさんが守ってくれるので!」
「はァ!?」
「約束しましたもんね?」


にっこりと笑顔を向けると、ゾロさんはやっと思い出したようで、苦い顔をしていた。めんどくせェ約束しちまった、と呟くのが聞こえた。ということは、ちゃんと守ってくれる気はあるということだ。なんだかんだ律儀だ。


「くれぐれも気をつけてね、ユナ…!神の怒りだけは買わないこと!ゾロといたら危ないわよ!!」
「はっ、確かに……!!」
「あ?」


ゾロさん神にも喧嘩売りかねないしなあ…!!そのときは全力で他人のフリして能力で…、と対策を練っていると、クスクスとロビンさんが笑う。そうだロビンさんもいる!!心強い!!
ルフィさんに行くぞと急かされた。ナミさんも気をつけてと声をかけ、名残惜しく手を振る。


「そんじゃ行くかァ!!!」
「おお!!!」


天気は快晴、冒険日和。ユナ、一世一代の大冒険です。






大冒険開始から間も無く。早々に私は先行き不安に感じていた。


「ルフィさんもゾロさんも方向音痴だったとは……」


ルフィさんは西だと思って東に向かい、ゾロさんに至っては方角さえ覚えていなくて”右”に進んでいる始末。私は地図はあまり得意ではないが、南と言われてまっすぐ南に進むことくらいできる。それに、海軍本部で海図はもちろん地図の勉強もしていたことが役に立っている。


「あの二人、はぐれたら途方もないところに行きそうだ…」
「元の場所に戻ったりしかねませんね」
「絶対はぐれないようにしような!」
「もちろんです。こんな島で一人とかイヤですよ」


すたすた進むロビンさんの後をついて行きながら、チョッパーさんとため息をつく。ロビンさんはさすがというか、迷うことなく南へ進む。ちゃんと周りに気を配りながら進んで行くが、何のアクシデントも起こらない。チョッパーさんは怖がっていたのが嘘なくらいに余裕たっぷりだ。


「もっとコワイとこだと思ってたけど、何も起きねえな!!」
「拍子抜けだな、チョッパーに賛成だ」
「だよな!!がはは!」


余裕綽々なチョッパーさん達にロビンさんがクスクス笑って振り向く。


「おかしな人たちね、そんなにアクシデントが起きて欲しいの?」


そんなことを言っていたからだろうか。目の前に、見たこともないくらい大きな大蛇が現れたのだ。


「……!!きゃああああ!!!」



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