Oh, bother!

大将青キジと隻眼の女





青キジのひとりごと



やってしまった。ユナちゃんが去って冷静になった今、一人になった執務室の中で絶望感を味わっていた。ユナちゃんは、去り際瞳に涙を溜めていた。泣かせてしまった、俺が。


言い訳くらいさせてほしい。ストレスがだいぶ溜まっていた。 ストレス、というか、気苦労と言う方が近いか。
なぜかユナちゃんコミュニティがどんどん広がっていく。おそろしいほどだ。スモーカー、たしぎちゃん、ヒナ、その辺りは何ら問題ない。顔も知らないような海兵くんと仲良くなっていても、友達が増えるのはいいことだし馴染んでいる証だと思い、別に気にもしなかった。

しかし問題は七武海の連中だ。あのドフラミンゴが興味を持ったことから始まり、ハンコックに引き続き、先ほどミホークと会っていたという情報を聞いた。あの気難しい奴らをどんどん手懐けていく。ユナちゃんの情報が出回っているようだからなおさら危険だと何度も言っても、ちゃんと分かっているのか疑問だ。ユナちゃんがもし連れて行かれたりしたらどうする。七武海だろうがなんだろうが、即刻そいつを殺しに行きそうだ。今すぐにでも監禁したいくらいなのだが、なんとか押しとどめている。ユナちゃんに嫌われるのは避けたい。そう思っていたから、わりと自由に好き勝手させておいた。それなのについに、俺は自分から嫌われるようなことを。


「はあああ……」


先ほどの怒りと悲しみに震えるユナちゃんの表情を思い出して頭をかきむしる。
あそこまで言うつもりはなかったんだ。確かに気が立っていた。さすがに言い過ぎたと思って、しかしまだ怒りは収まらなくて、仕事をするフリをしていた。
そんなときに、あのワインだ。あのミホークが女にプレゼント。どういう経緯かはわからないが、何らかの好意があるとしか思えなかった。さらに気が立っていた俺は、ミホークとユナちゃんが仲良く街を歩く姿を想像してしまったのだ。つまり、ただの嫉妬。かっとなって、気がついたときにはワインを凍らせていた。その瞬間の、俺を見るユナちゃんの目。


「………」


仕事が手につくわけもない。俺はとにかく後悔して、拾い上げたワインを見つめた。

とにかく、謝りに行こうと思い部屋を訪ねるが、いなかった。もしやと思いスモーカーの執務室へ行くと、案の定スモーカーがかくまっているのだろう、察した様子で俺を見た。


「ユナちゃん、いる?」
「……いますけど、何すか」


男の部屋に逃げ込んでいるなんてと思いかけたが首を振る。スモーカーはユナちゃんにとってそんな対象ではない、信頼のおける人物。相談に来るのは普通だ。


「事情は知ってんだろ?謝りに来た。通してくんない?」
「…今は会いたくないそうです」
「……」


覚悟はしてたが、なかなか、ダメージを受ける。ため息とともに壁に手をついた。すると、スモーカーが口を開く。


「自分が悪いこと、あいつ分かってると思いますよ。反省してるみてェだったし。落ち着いたら、明日会議が終わってからでも謝りに来ると思います」
「……俺も謝らなきゃなんねェんだ。言い過ぎたし、やりすぎた」
「そうみたいですね。傷ついたみてェだ、攻撃を受けたのが余程衝撃的だったんでしょう」
「だよなー……」


とどめとばかりにスモーカーが言い、ずうんと落ち込む。謝れば済む話でもないかもしれない。謝ってお互いに許したとしても、そのあとで怖がられたら、嫌われていたら。考え出せばきりがない。


「ま、あんたらの問題だ、どうにかしてください。俺を巻き込まないで欲しいんですがね」
「…悪いな」
「ハア…貸し一ってことで。」


煙を吐き出してめんどくさそうな表情をした後、執務室のドアを閉めた。
とにかく、明日乗り越えてから、会議を終えてから謝りに行こう。一晩経てば少しはユナちゃんも落ち着いているはず。明日一日、この状態で俺のメンタルがもてばの話だが。


「大将らしくないですね」


本当にスモーカーの言う通りだ。らしくない、こんなに女々しいなんて本当にらしくない。めんどくさいことこのうえないはずなのに、いつもならまあいいやで終わるのに。どうにもあの子が関わると、俺は普段通りではいられないのだ。



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