Oh, bother!

大将青キジと隻眼の女





大将赤犬と会話



いつもと何ら変わらない日常が続いていたある日、突然海軍本部が慌ただしくなった。何の理由かといえば、七武海の招集の前にして、七武海の一人であるサー・クロコダイルが悪事を働いていたことが暴かれ、七武海の称号を剥奪されたことによる。アラバスタ、という国の英雄とか呼ばれていたはずだが、何が起きたのだろう。詳しくは知らないが、スモーカーさんが捉えて大監獄送りにしたのだとか。すごいなあ。スモーカーさんが帰ってきたらいろいろ武勇伝を聞かせてもらおう。
クザンさんもこのときばかりはダラダラすることもできずに働いているので、ほぼ部外者である私は蚊帳の外である。迷惑もかけられないので執務室にもいられず、外に出る。
修行でもやるかなあとぼーっとしながらとことこと歩いていると、人にぶつかりそうになって慌てて前を見た。そして血の気が引いていく気がした。目の前で私を見下ろすその人は、あろうことか大将赤犬、サカズキさんだったのだ。


「ご、ごめんなさい!!前を見てなくて…!」
「何しちょるんじゃこんな所で……隻眼の女ァ」
「挨拶が遅れましたっ、ユナです」
「そんなことは知っちょる」


ぎろりと睨まれたような気がして縮こまるが、怒ってはいないはず。深呼吸してから、経緯を説明した。


「すると、お前は今暇しちょる訳か」
「はい」
「スモーカーが帰ってくる。出迎えでもしとれ」
「!スモーカーさんが?たしぎちゃんも一緒ですか?」
「女剣士のことか、一緒のはず」
「そうですか。すぐ行きます、ありがとうございます!」


にっこりと笑って頭を下げ、歩き出そうとすると、背中に声をかけられた。


「精々機嫌を取っておけ」
「え?」
「機嫌悪いはずじゃけェ、あまりうるさくせんことを勧める」
「はあ…どうしてですか?」
「お前には分からん事情というものがあるけェのォ」
「事情ですか。」
「それにしても」


何か問題があったのだろうか、と首を傾げていると、サカズキさんはじろじろと私を見て言った。


「クザンが可愛がっちょると聞いて少し興味はあったが、ただの普通の女…一体どこが気にいっちょるんだか」
「おっしゃるとおりどこからどう見ても普通の女ですよ私は」


そう言う私をフン、と鼻で笑ったあとに、眼光を鋭くする。


「どれだけ普通の女でも、海軍にいる限りは、役目を果たしてくれんと困る。使えると判断されたからここにおるんじゃろうが」
「…はい。早く貢献出来るように頑張ります」
「フン。…早く行け」
「はい。…あの、」
「何じゃァ」
「ずっとお会いしたかったので、お話できて嬉しかったです!」


ではっ、と会釈してすぐさま歩き出した。ちょっとだけ怖いけど、やっぱり普通に優しい人だと思う。会えてよかった。本当は挨拶に行くべきだったんだろうけどなあ、と少し悔やまれる。


「……クザンも物好きなことだ」





「スモーカーさん!」
「……ユナ」


スモーカーさんがちょうど軍艦から降りてきた。私を一瞥すると、スタスタと歩いていく。その様子は確かに機嫌が悪そうだ。気にしながらもいつも通り話しかける。


「お疲れ様です、お手柄でしたね!さすがスモーカーさんですね」
「それは俺の手柄じゃねェ」
「え?」
「本当はある海賊がクロコダイルの陰謀を阻止したんだよ。しかしそれじゃ面子が立たねェから、俺の手柄ってことにされただけだ」
「…そうだったんですか…」


しかめっ面で、声のトーンもいつもより低く話す。そういう訳か。サカズキさんはそれをわかっていて、私に助言をしてくれたのか。


「全く頭に来るぜ、力が及ばずに泣いてる部下もいるってのに」


煙を吐き、舌打ちをするスモーカーさんの隣で歩きながら、聞いていた私はきっぱりと言った。


「マジメですねえ」
「…あァ?」
「そんなの、手柄もらえてやったーラッキー、で済ましちゃえばいいんですよ」
「そういう問題じゃねェだろうが…!」
「だってウジウジしたって仕方ないでしょう?今更政府が我儘で自己中心的なのは分かり切ったことじゃないですか」
「……!」


そう、私のときもそうだったから。能力だけを、自分たちの利益だけを追い求めて、他はどうなっても構わない。他人の気持ちなんて考えない、そういう奴らじゃないか、政府なんて。


「それより、力が及ばなかったなら、もらった地位を利用してでも、開き直って次はやってやろうって思うしかないでしょう。ウジウジしてるより、そっちの方がスモーカーさんらしいですよ」


上手く言えないが、言いたいことは言えた。にっと笑うと、スモーカーさんはふうと煙を吐き出してから、私の頭をぺしっと叩いてきた。


「お前に励まされてちゃ俺もおしまいだな」
「失礼ですね!」
「言われなくても分かってる、んなこと。なあ、たしぎ」
「え!たしぎちゃん?」


振り向くと、スモーカーさんの後から降りてきたたしぎちゃんが立ち止まってうつむいていた。ぱっと顔をあげると、ほんの少しはれた目が私を見た。ずびっと鼻をすすり、笑う。


「はい!勿論です!」
「たしぎちゃん、会いたかったですよ〜!お疲れ様です!」
「…!!ユナちゃん〜〜!」


久しぶりに見たたしぎちゃんはあちこち怪我をしていて、思わず抱きつくと、ぎゅっと返してくれた。ありがとうございます、と小さく言われて、何もしてませんよと笑った。



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