エース


エースは私が一番仲が良い仲間だ。いつも明るくて、天然で、ノリが良くて、とても気が合う。空気が読めなかったり、バカだったりするけど、そんなところもエースらしくていい。弟がいるらしく、いつも嬉しそうに思い出を語る。いつか私も会ってみたい。
私たちが日頃何をして過ごしているかというと、みんな筋トレしたり戦闘の練習したりもするが、自由に行動していることが多い。海賊は自由だが、自由と退屈は違う。退屈なのはいただけない。ということで、みんな思い思いの時間を過ごしているのだった。それに対して隊長陣は一般クルーとは違い、この大家族を率いているのでそれなりの"仕事"がある。主に書類の仕事が多いようだ。時々マルコの積まれた書類を手伝うこともある。それでもエースはいつも遊んでいる気がする。どうせ仕事はやらずに溜めているのだろう。後でマルコから拳骨が飛んで来るのは毎回のことである。
エースとはいつもいろんな遊びをしていた。懲りずにマルコにいたずらしたり、サッチにいたずらしたり、ジョズやラクヨウにいたずらしたり。いたずらばかりではないが。
そして、いつものごとく暇を持て余した私とエースは、今日も一緒に遊ぶことにした。


「…で、かくれんぼ?」
「そのとおりです」


私は、ハルタの部屋に駆け込んで、ベッドの中に隠れている。毛布を被って大の字に寝転がった。丸まったら、こんもりした形で隠れてると分かってしまう。これならば分からないはずだ。このかくれんぼの勝敗に夕食のデザートを賭けているので負けられない。


「なんで俺のところに来たのさ。巻きこまないで欲しいんだけど」
「近くにあったから。怒らないでよ、すぐ出て行くからさ。たぶん」
「俺のベッドに勝手に入んないでくれない?」
「やー、とてもいい寝心地です」
「感想は聞いてないし」


そういう問題じゃないんだけど、と呆れたような眼差しを受けて、すぐに私の名を呼ぶエースの声が聞こえた。ハルタに言わないよう釘をさして毛布を被る。


「ここかっ!?おなまえー!」


ガチャッとドアを開けた音がする。どきどきしながら息を殺す。ふわりとハルタの匂いがした。


「ハルタ、おなまえ来なかったか?」
「来てないよー」


さすがハルタだ。バラされるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、心配いらなかった。


「んん?でも、なんか…このベッド、膨らんでねェか?」


変なところで勘が鋭い。足音が近づいてくる。やばいやばい!


「あ、そういや隣の部屋に行ってた気がする。行ってみれば?」
「そうか?分かった、行ってみるな!ありがとうハルタ」


足音は遠ざかり、そのうちドアが閉まる音がした。がばりとベッドから出る。


「ハルター!ありがとう、助かったー」
「危なかったね。俺のおかげだよ、感謝してよね」


そのときドタドタと誰かが走って来て、ガチャリとドアが開いた。まさかと思って振り向く。


「やっぱここからおなまえの匂いがすんだよなあ、おいハルタ………って、おなまえ見っけー!!」
「えええ!」


早くも勝負がついてしまった。まさか戻って来るとは…というか、匂いで分かるって…犬か。同じことをハルタも思ったようだった。


「おなまえの匂いって分かるわけ?」
「分かるぜ。石鹸の香りだ」


エースは私を引っ張って髪に顔を近づけ、すんと匂いを嗅いだ。いよいよ犬である。そして満足そうな顔をする。後ろにしっぽを振っているのが見えそうだ。


「ん、でもハルタの匂いもするなァ。どこに隠れてたんだよ」
「ハルタのベッドの中」
「ベッドの中ァ?」


エースがハルタと顔を見合わせる。ハルタは少し目を細めて呆れた感じだ。エースが私のほうに視線を戻した。


「……おなまえ、勝手に男のベッドに入っちゃダメだ」
「いいじゃん別に。兄妹、なんだし」
「ダメだ。そんなに入りたいなら俺のベッドに入っとけ」
「いや入りたいわけじゃないからね!」


妙に神妙な顔だったので納得出来なかったがとりあえずこくりと頷いた。ハルタが何故かため息をついた。
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