後半戦


「ええええ!ちょっとナシでしょナシ!」
「アリに決まってんだろい」
「うおおお!さっすがァ!」
「マルコすごすぎ!」
「やっべーマルコ!!」
「へェ…こりゃァ…」


マルコのターン、マルコが撃ったビー玉は、センターに命中した。しかし、ただの命中ではない。青い炎が火の粉のように飛び散り、それが当たって他のボトルも倒れた。もちろん残っているボトルはなく、つまり五本全て倒れた。
どういう原理なのかは知らないがバリバリ能力使ってるし、ナシナシと非難するが生憎審判はいない。マルコはニヤニヤしながら得点を書き足した。これでエースのチームは九点。ギャラリーから声援が聞こえる。やはりエースチームに賭けた人が多いらしい。マルコの信頼は厚い。
にしても、ずるい。こっちには能力者はいないというのに、あっちには二人いるというところからまずずるい。まあそれを言ったところで、今さらなのだが。


「これはもう…イゾウが全本倒すしかない…!」
「そうだな…!イゾウ!頼むぜ…!おなまえに命令できる権利がかかってるんだからよ!!」
「それはどうでもいいけどね!」
「少し荷が重いが…まあ任せときな」


銃にビー玉をこめながらニヤリと笑うイゾウ。自信ありげな笑みに少し希望が見えるが、イゾウでもただのビー玉で全本は無理なんじゃないだろうか。良いとこいって三本くらいかな、と予想する。やはりまともに撃ってはせいぜいそのくらいなのだ。
イゾウは慎重に狙いを定めて、手に力を込めた。これで勝負が決まる。
パァン、と。ひときわ力強い音を出して飛び出したビー玉は、明らかにスピードが異常だった。センターのボトルをかっ飛ばしてそのまま奥のボトルまでぶち当たった。絶妙な位置にビー玉が当たった二つのボトルが宙を舞う。そして、隣のボトルに当たり、そしてそれが隣に当たり、道連れにして落ちていく。樽の上には一本も残っていなかった。一瞬、シンと静まる。その静寂を破ったのは私である。フッと銃口を吹くイゾウに飛びついた。


「っイゾウーーっ!すっごい!かっこいーーっ!」
「おい、分かったからくっつくな。…聞こえてねェな」
「聞こえないなあ!さすがイゾウぅ!」
「お前ェ、イゾウ〜!!なんだよ今の!サッチくん惚れちゃいそう!」
「気持ち悪ィ今すぐやめろ」
「辛辣な所も素敵ィ!」


きゃいきゃいと喜ぶ。さすがイゾウ、あのマルコをも凌ぐ狙撃術!狙撃に関しては右に出る者がいない。ギャラリーからも歓喜の声やらどよめきやらが起こる。なんとこれで同点である。


「マジかよい……ま、ハルタが残ってるからな。ハルタ、やってやれ」
「一本でも倒せば勝ちなんでしょ?楽勝ー」


そうだ、エースのチームにはハルタが残っている。ハルタがもし一本でも倒せばその時点で負けが確定する。ハルタは銃を扱えるのかは分からないが、銃と言えどもオモチャだし、私でさえ一本倒したのだから外すようなことはないだろう。ここまで頑張ったのに。
ハルタが銃を構える。勝ち誇った笑みを浮かべるマルコとエース。サッチは悔しげに唇を噛んでいて、イゾウは腕を組んで見守っている。ハルタの指が引き金にかかる。ぐ、と力がこもって撃つ瞬間、私は小さく言った。


「ハルタ…!」


ハルタがぴくりと反応し、そのまま撃った。カンッ、と音を鳴らして、ビー玉が樽に当たって跳ね返って転がった。ボトルは少しぐらりと揺れただけ。まさか、ハルタが外した?しーんとみんなが固まる。そんな中、ハルタが勢いよく振り向いた。


「っおなまえ!!いきなり呼ばないでよ!!外しちゃったじゃないか…!」
「え、ええ!で、でも…そんなに大きい声じゃなくて独り言レベルだったし…!」


胸ぐらでも掴みそうなハルタにあたふたと言うと、イゾウが言った。


「あァ、そんなにうるせェ声じゃなかったぞ。お前が外すほど動揺するとは思ってなかったがなァ…ハルタ?」
「…………!」


イゾウがニヤニヤしながら言うと、ハルタは口をつぐんだ。赤くなっているような気がする。それもそうか、こんな大事な場面で失敗すれば、ハルタでも恥ずかしいものだ。


「えーっと、あの…ごめん」


とりあえず謝ると、ハルタはぷいっと顔を背けた。


「別に!おなまえの声に動揺したわけじゃないし!」


そう言い捨ててマルコの所へ走って行った。マルコはたまにはこんなこともあるよいとハルタの頭をぐりぐりと撫でた。


「じゃあ、同点っつーことか?」


エースが頭をかく。そういうことだなあとサッチが言う。ハルタをちらりと見ると、ばっと違う方を向かれた。もしかして、同点ならばどちらも勝っていないということ。じゃあ私は、言うこときかなくて良いんじゃないのだろうか。図らずも最善の選択になったと喜ぶ私を目にも止めずにエースが提案した。


「じゃあ、みんなで一つの命令にすっか!」


いやいやいやそういう問題!?しかし今頃私の意見なんて聞いてくれない。そうだな、とみんなが頷いた横で、一人がくりとうな垂れた。
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