-桃城SIDE-


「…ありがと、武くん」


桃「おう、俺でよけりゃいつでも呼べって!」


最近の春花はどうも危なっかしい。


俺が見てる限りじゃ、
眠そうに目ぇ擦ってたり、ぼーっとするのが増えた。

…どんだけ見てるんだ、俺は。

好きだってこと認めることすらできなかったくせにな。




桃「はぁ…ったく、俺も情けねーなぁ、情けねーよ…。」


荒井に下心があったが故の行動なのかどーかは知らねぇが、

乾先輩と、海堂から聞いた話きいてたなら薄々わかるだろ。


春花に、テニスをさせるのはダメだってことぐらい。


それを1番分かってんのは春花だ。…1番、悔しいのもきっと春花だ。



桃「…しょうがねぇよな、しょうがねぇよ…。」


海「なに一人でぶつぶつ言ってやがる。」


桃「ぅげっ、海堂!」



海「いちいちうるせぇんだよ、てめぇは。」

いつもならこんなこと言われちゃ頭にきてるとこだが、
…今日はしょうがねぇ。

桃「おい、お前に聞きたいことがあるんだけどよ。」

海「なんだ?」


桃「…その、春花って、なんでテニス…辞めちまったんだ?上手かったんだろ?」


海「…お前が知ってなにになんだよ。」


桃「うるせぇな…知りてぇだけだ。」

海「フン。…知りたきゃ教えてやる。だが…むやみやたらに人に話すんじゃねぇぞ。それだけは約束しろ。」

桃「あぁ、分かった。」


海「…あいつはーーー…」



海堂によると、

春花はかなりの腕のテニスプレイヤーだったが
力ずくで戦ってたことで肩を壊したことがあり、医者に止められた。…今肩がどうなってるかはわからないらしい。
あと…

海「あいつは…試合で相手の頭に怪我を負わせちまった。パワーもあったし、相手が弱ってたのもあった…いや、ありゃ場所も悪かったな…意識不明にまでなっちまった。…今は普通らしいが。だが春花はすっかりトラウマになっちまって。…で、テニスラケットを握りコートに入るだけで記憶が蘇ってきて、ダメなんだ。」

桃「ダメ…っつーと、?」

海「…いろいろある。過呼吸に…なったこともある。」


桃「…そうか。…悪かったな、こんなこと聞いちまってよ。」


だからあんなに、
テニスラケット握るの嫌がってたのか。
…俺が、守ってやらねぇとな。

はぁぁ…。ったく。
なんでこんなに好きになっちまったんだろうな、俺は。

…あ、英二先輩と越前もか。
(この前のカラオケ帰りに誰が春花をどんだけ好きかっつー勝負してた←)


桃「…っしゃ、もっと頑張れ桃ちゃん、負けんじゃねぇよ桃ちゃん!」

そう言って気合いを入れながらその日は帰ったのだった。





16.勝負って聞いちゃ負けたくねぇからな


(絶対負けたくねぇ。)

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