07


友達の雑用を手伝っていたらこんな時間になってしまった。帰宅部のあたしが、空が夕焼け色になるまで学校に残ることは滅多にないからある意味新鮮ではある。どこの部活ももう終えたみたいで、学校中は静まり返っていた。

「樹里サン、今帰りっスか?」

聞き覚えのある声に振り向くと、赤也くんが居た。制服姿でラケットバッグを背負っていて、ちょうど部活終わりのようだ。

『うん、そうだけど』
「でしたら一緒に帰りましょーよ!」
『どうしようかなー』
「そんなこと言わずに!ほら、帰りますよー」

赤也くんはあたしの腕を引っ張ると、ご機嫌そうに歩き始める。何この図。あたしは、明らかに引っ張られてる犬?みたいなんですけど。

『分かった!一緒に帰るからとりあえず腕を離して!』
「あっ、すいません...」
『もう!一応あたしは先輩なんだからね!』

赤也くんは、すいませんと連呼しながら何度も頭を下げた。そんな姿が可愛くて、笑ってしまったけど彼は謝るのに必死だったのか気づいてなかったようだ。ある意味そっちのが良かったかも。

『ユニフォームで帰っちゃダメなの?部活終わって汗かいたのに制服に着替えるの嫌じゃない?』
「あー、ダメなんスよ!まぁ、汗がしみてるユニフォームで帰るのもいやッスけどね」
『まぁそれも確かに...』

しばらく談笑しながら歩いていると、ケータイの着信音が鳴り響いた。それはあたしのケータイからで、ディスプレイを見ると柳くんからだ。なんだろう、珍しい。

『もしもし天野です』
「ああ、柳だがいきなりすまない。今赤也といるか?」
『えっ...うん、いるけどどうしたの?』

あたしはチラリと赤也くんをみると、彼の肩がビクついたのを見逃さなかった。ん?様子がおかしい、何かあったのかな。

「はぁ...、やはりそうだったか。実はミーティングに参加しないで帰ってな、弦一郎が怒っている」
『えっ?そうだったの?』
「ああ、悪いが学校に戻ってくるように伝えられないか?」
『分かった!』
「すまない」
『いいよー!気にしないで!』

電話を切って赤也くんを見ると目をそらされた。もしかしてミーティングって分かってて帰っているのか。

『赤也くん、柳くんと真田くんからお呼び出しですよ』
「うぅ...バレちまったか」
『いやいや、普通にバレるでしょ。2人の怒りが爆発しないうちに早く戻りな』
「...分かりました」

赤也くんは今にも泣きそうな目であたしを見てくる。そんな目をしてもあたしは何も出来ないのに...。

「なんで柳先輩の連絡先知ってるんですか?」
『それは同じクラスだし、友達だから...』
「じゃあ俺にも教えてください!」
『いいよ、はい!読み込んで!』
「えっ!?いいんスか?よっしゃー!!」

先程とは打って変わって、嬉しそうにケータイを取り出すと、すぐにメッセージを送ってきた。いかにも赤也くんが使いそうなよく分からないキャラクターのスタンプで「よろしく!」と書いてある。これから柳くんと真田くんが待っているとは思えないような高テンションで「それじゃ、連絡するッス!」と言って彼は走り去っていった。

_ _ ___

ご飯もお風呂も済ませて暇していた時だった。メッセージが来たから見ると赤也くんからだ。

"おつかれッス!起きてますか?"
"起きてるよ"
"少し話しましょうよ!"
"どーしようかなー"
"えー!話しましょー!"
"いいよ"
"やったー!そういえば今日、副部長にめちゃくちゃ怒られましたよ!"
"大丈夫だったの?"
"まぁ、いつも通りッス"

赤也くん、そんなにしょっちゅう真田くんに怒られてるんだ。もしかして、結構な問題児?でもなんだか想像できちゃう。

"あんまり真田くんを困らせたらダメだよ"
"樹里サン、副部長庇うんだ..."
"苦労かけ過ぎるから真田くん老けちゃうんだよ"
"樹里サン、それって...!"

送ってから気づいたがもう時すでに遅し。いやいや、本当に悪気は無いんだって。3年になって久しぶりに真田くんに会ってやけに老けたなとか思ったけど...。もしかして犯人は赤也くん?

"そろそろ寝るね!おやすみ!"
"あー!逃げたー!"

逃げたのは否めないけど、本当に瞼が重くなって来ていた。なんだか楽しかったなぁ。あたしは、赤也くんとのやり取りを噛み締めながらゆっくりと瞳を閉じた。




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