04


あたしもいい人だ。仲も良くない後輩に強引に約束をこじつけられたのに、こうしてちゃんと待ち合わせ場所で待っている。

それにしてももう約束の時間なのに彼の姿がない。連絡先分からないから連絡も取れないし...。ちょっと遅れてるだけかもしれないから待ってあげるか。

と、待ち続けて15分が経ったが未だに彼は現れない。え、これ忘れられてない?てか、ここまで待ったあたし偉くない?これ以上彼を待っていたら、あたしが遅刻してしまう。

からかわれただけ?失礼しちゃう、仲も良くない年上にこんなことするなんて。こういう適当なところも悠と似てる...って、あいつがいたか!!悠経由で連絡してもらえばいいんだ!

メッセージを送って数分後、「電話出ないから寝てるはず」と来た...

人を誘っといて寝坊って...。どうなってんだ、あの天パ坊や...。あー、バカバカしい。あたしは早足で学校へ向かった。

今日の始まりは最悪だ。イライラしているのが柳くんにも分かったのか、あたしが席に着いたら「どうした」と聞いてきた。

『柳くんの後輩、約束すっぽかしたけど』
「何...そうだったか...。アイツには今日の部活でキツく言っておこう」
『いいよ、もう絡むことないはずだから』
「それはどうだろうな...」

それはどうだろうなと言われても、実際に言い出しっぺが寝坊して来なかったんだから相手も気まずいだろうし、別にあたしだって自分から責めに行こうとは思わない。

時間があたしの怒りを鎮めてくれて、お昼休みに入った頃には朝のことなどさほど気にしていなかった。

最近仲良くなった子と一緒にお弁当を食べようと席に向かってると、その子が見えた。まぁ、柳くんに用だろうな。その程度にしか思わなくて、机にお弁当を広げると友達が「いいの?」なんて聞いてくるから何が?と思って、気配を感じる横を見れば彼が立っていた。

「樹里サン...その...今朝はすみませんでした!!!」

教室中に響き渡る程の声で謝った彼は勢いよく頭を下げた。
みんな彼を見ている。さすがにいたたまれなくなったあたしは、彼と一緒に廊下に出た。

『ちょっと、いきなりびっくりするじゃない。今朝のことならもう気にしてないからいいよ』
「俺が気にしているんです!」

そういう言った彼の目には涙が浮かんでいる。 今にも零れそうな涙を見て、少し言い返したい事もあったけど何も言えなかった。

『他の先輩にはこんな事しちゃダメだよ』
「樹里サンだからしちゃったんです!」
『...どういうこと?』
「楽しみすぎて、寝れなかったんです」

なに...それ...。言い訳にも程があるんじゃない。

『からかうのもそこそこにして』
「からかってなんかいないッス!ほんとなんです!」
『...』
「もう一度俺にチャンスをください」

そう言い頭を下げる彼。なんでここまで必死なんだろう。さすがにここまでされたら、冗談とかには見えないし。でも、彼が何を考えているのかが分からない。

「天野、一度だけチャンスを与えてやってくれ」

いつの間にか柳くんがいて、彼の先輩である柳くんに言われたら断る訳にはいかない。なんかずるい気がするけど、ここまで誠意を見せてくれてるのに乗らないあたしも大人気ないよね。

『分かったよ。明日でいいの?』
「...ほんとッスか!明日でいいです!明日は絶対に来ます!!!ありがとうございます!!!」

目を輝かせる姿を見て、何だか憎めない子だなって笑いが漏れた。

「赤也、明日来なかった時には...どうなるか分かってるな」
「明日は絶対に遅れずに行きますよ!それじゃ、明日ね!樹里サン」

あたしは小さく手を振った。赤也くん、不思議な子...。




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