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新学期を迎えて、あたしは立海大附属中学校に転入した。それも、男として。肩まであった髪はショートにして、胸はサラシを巻いて潰している。そしてクラスは2年D組と言われた。

「今日からみんなの仲間に入る、樋口大河くんです」
『よろしくお願いします』

拍手で迎えられなんだか照れくさい気持ちになる。

「席は...切原くんの隣の席でお願いします」

切原?なんか聞いたことがあるな。まぁいいやと気にせず自席につくと、ガン見されているもんだからこっちもガン見し返してやった。

「お前ラケバなんか持って、テニス部に来る気じゃねぇよな」

あ!テニス部の切原赤也。試合こそ見たことはないけど、かなりの腕前と聞く。同じクラスになれるとは。これでテニス部にも溶け込めやすくなった。

『そうだけど...』
「ウチのテニス部知らねぇのか?お前が易々とレギュラーになれるような部じゃないぜ、諦めな」

ふーん...偉く舐められてんじゃん、あたし。

『そうなんだ。じゃあ、頑張らないとね』
「へいへい、せいぜい頑張ってくだせい」

彼はそう言って大きな欠伸をした。
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放課後になり、部活へ向かおうとラケバを背負うと、切原くんに絡まれた。

「まさか本気でテニス部に来るんじゃねぇよな?」
『行くよ』
「...そうかよ、分かった。案内するよ、一緒に行こうぜ」
『ありがとう』

良いやつなのか、悪いやつなのか分からないけどありがたい。全国制覇してるだけあって、部はピリついた雰囲気だろう。部長の幸村さんが歓迎してるとは言ってたけど、2年で転入して来たあたしを受け入れてくれるのか。少し不安だけど大丈夫。

男装して学校来てる方が色々とやばいと思うから...
それに比べれば...

「おい、顔色良くないけど大丈夫か?」

うそっ。顔に出ているのか、やっぱり緊張はしている。

『うん、大丈夫だよ。ありがと』
「ついたぞ、ここが部室だ」

切原くんが先に部室に入って行くと、すぐに出てきて手招きされた。部室に入ると既に人がいて、その人はプリントとにらめっこをしていた。

『お疲れ様です、今日からお世話になります、樋口大河です』
「ああ、おつかれ。お前が樋口か。幸村から話は聞いている」

黒い帽子を被った威厳が漂うその人は、あたしを見た。

「俺は真田弦一郎だ。副部長をしている」

!?
この人が、真田弦一郎!!なんか、凄く変わった?
大人にしかみえないけど...

「着替えたらコートに集合だ。今日は俺がお前を見定める」
『はい、よろしくお願いします』

まさか真田さん直々に見てもらえるなんて。今日で力を見せるしかないみたいだ。

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