二口



『つーかまえた』

誰もいない視聴覚室
そこで窓際に立ちぼーっと校庭を見つめるのが好き
だけど私の安息の地を脅かす背から伝わる人1人の体温
自分の体に回る腕は私の自由を奪った

「離して」

こう言ったところで無意味だって分かっていたけど、抵抗1つ見せずに彼の腕の中にいるのも癇に障る
別に好きじゃなかった
何をするでも浮かんでくるとってもムカつくこの二口堅治って奴が好きじゃなかったはずなのに
回る腕が離れ私の肩を掴み、見たくもない、見せたくもない酷い顔を合わせるように私の体を反転させた
そして軽く頬に触れた感触に悲しみというなんとも言えない思いが私を覆いつくし、この憎たらしい二口堅治って奴の顔を1発殴ってやろうと手を振りかざすが、見事に止められた手は行方を失いみっとも無く力をなくす
それと一緒に頭を垂れた私を彼はもう1度
今度は正面からぎゅーっと体に回る腕で私の自由を奪った

「嫌い」
『知ってる』

大嫌い
死んでしまえばいいのにと続く言葉に返される言葉は変わらず、知ってるという言葉で

『俺が死ぬ時は名前も死んでね』

あははと声を上げて笑うと私のスカートの中に手を突っ込んできた



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