及川
「祝2桁!!!」
ぱんぱんぱんと手をたたく目の前の女は俺の好きな人だ
にやにや笑って人が振られた事をお祝いしてくれるなんてとんだ性格の持ち主だが、それを言ったら俺だけには言われたくないらしい
名前は俺が振られたお祝いで買ってきたケーキを主役より先に頬張ると
「今度はどーして振られましたか?」
俺のフォークをひゅっと俺に向けたのは、マイクのつもりなのかそれとも食えってことなのか謎
でも振られた理由なんて、そんなのいつも一緒
及川君が何を考えているか分からない
及川君って思ってた人と違う
って何だろうねそれ
私の事を知らなくても付き合っていくうちにお互い知っていければいいなんて最初は言うくせに、どうやらどんどん欲が肥大していくんだろうな
俺にもあーして欲しいこーして欲しいなんて知らないよそんなの
「及川性格悪いもんね!!」
いひひってすんごい可愛い笑顔で言われても、俺だって名前にだけは言われたくないよ
手渡されたフォークをケーキにぶっさして頬張る
甘いよ甘々だよ
『てかさー、名前こそ早く岩ちゃんに告白して振られちゃいなよ』
そしたら俺がこうやってケーキ買ってお祝いしてあげるって笑ったら、この野郎!って鼻に生クリームを付けられた
「やっぱり及川性格悪い!!!」
マイエンジェル岩泉君を見習ってほしいよって、岩ちゃんがエンジェル?
想像したら面白すぎて噴出した
そしたら名前はほほを膨らまして何笑ってんだって
『岩ちゃんは俺にとってはエンジェルじゃないんだもん』
俺と名前を引き裂く悪魔だ
岩ちゃんがいなかったら彼女は俺を見てくれたのかな?なんて事を数えきれないくらい考えた
でもやっぱり岩ちゃんが居なかったら今の俺が居ないわけで
今の俺が居ないってことは、今の名前も居なかったわけで
「ねぇねぇ、それより噂で聞いたんだけどさ...」
及川ってイ○ポって本当?ってなんでそんな可愛いお口でそんな言葉...ギャップ萌えだよなんて思えないよ
悲しいよ及川さん
『てかなにその噂
誰から聞いたの!?』
誰だよそんなでたらめ流してんの!
名誉棄損で訴えるぞ
「いや、私なんだけどさ」
『お前かよ!!!』
それって噂っていうの?
聞いたっていうの?
突っ込みたいことはいっぱいあるけども
「今までの彼女としてないんでしょ?」
思春期真っ只中の健全な男子であろう子が一切手を出さないなんて!!!おかしくない?って花巻と松川から聞いたってあいつら明日会ったら絞める
いや、正直そんな雰囲気になる前に別れちゃうというか
付き合っていたって俺はバレーがある訳で、さらに別に付き合ってても俺がその子を好きかって聞かれたらNOなわけで
「及川徹、童貞説は固いと思ってるんだ」
真顔で言う事かな?って思うけどもうどうだっていいや
『そんなこと言ったら岩ちゃんも固いと思うけどね』
「やっぱり!?ひゃっほー!!!」
ってなんでそこで喜ぶのかな...まぁいっか
イチゴだけ綺麗に食べられたケーキを口に運ぶ
『早く振られちゃえ!!』
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