新作パンのお味は
月に1度の新作パン発売の日
梟谷購買パンのファンであればその日を地味ぃに楽しみにしているのは過言ではない
[木兎まじで全部食うのか??]
両手いっぱいのパンを見て木葉がおえぇっと嗚咽する真似しては胸をさすっていた
当たり前だろうと教室に帰るまで我慢できずに食べていたカレーパンを1つ食べ終えた時に反応したレーダー
[ちょっ!何お前ふざけんなよ!!?]
持っていたパンを全部木葉に持たせるとぎゃーぎゃー騒いだがそれ所じゃない
廊下突き当りの角を曲がれば
『名前ちゃーん!!!!』
愛しのマイエンジェル松枝名前の姿
駆け寄ると、ゲッ先輩 なんて聞こえた様な気がしたけど気のせい
俺の耳は都合がいい
なんでこんなところいるの?会えて超嬉しい!というかこんな所でばったり会えるなんてやっぱり俺たちって運命だわ と言えば、校舎の中で会うのは運命じゃなくて偶然ですよ と相変わらずの感じで返されるけど、なんだかそれが赤葦みたいな反応でそこはちょっと気にくわない
「私お昼買いに行かなきゃいけないんで失礼します」
そう言って自分の横を通り過ぎ、購買の方へと歩き始める彼女の手を取る
『お昼ってお昼?』
俺の言葉にえ?っと疑問符を浮かべる彼女
『名前ちゃん、お昼購買でパン買うの??』
「そうですけどなんで私の名前...」
自分の名前が呼ばれた事に驚いて目が点状態だが
(さっきも呼んだけど驚いて気がついてないみたい)
好きな子の名前くらいサーチするのが当たり前ってことで置いといて
『もう購買のパン残ってないと思うけど』
「え!!?」
昼が開始されて早10分
普段ならメロンパン等の定番パンなら残っていることもあるだろうが、今日は月に1度の新作パン発売の日
ほぼ100%もうどのパンも完売してしまっている
「そんなに早くなくなるものなんですか!?」
普段買い弁なんてしないんだろう
流ちょうに空いてから買いに行けばいいやと思っていた自分が浅はかだったと見るからに落ち込んでいる
か、可愛い!!!!!!
俺の中の何かがぐわっと鷲掴みにされたその時
[木兎ふざけんなよ!自分のは自分で持てよコラぁ!!]
曲がり角から現れたのは俺の買った大量のパンを両手いっぱいに持った木葉
『お!ナイスタイミングだ!!』
[はぁ!?まぢふざけんなお前!!]
俺は名前ちゃんの手を取って木葉に近づき
『好きなの好きなだけ持ってけ!』
定番のカレーパンはさっき食べてしまったのでもうないのが気がかりだが、女子に人気らしいクリームパンやチョココロネが残ってる
その中でもクリームパンはデニッシュ生地に、たっぷりクリームの上には豪華にも季節の果物が乗った新作だったが、彼女にだったら新作だろうが何だろうが差し出したって構わない
むしろ全部差し出してもいいくらいだ
「で...でも先輩の分が少なく...」
『いいんだよ!ちょっと買い過ぎて食べきれないなぁって悩んでたとこだから!!』
さっき全部食うってお前言ってたくせに と言おうとする木葉の足を踏み口を閉じさせ、彼女の手の中にクリームパンやらチョココロネを乗せていく
「もう大丈夫です!食べきれないし」
甘いものばっかりではダメだろうかとおまけにサンドウィッチもと手に取ったがそれは断られてしまった
でもでも、遠慮がちに 本当にありがとうございます と初めての笑顔を向けられ去っていく彼女の後姿を見てた時にトクンと鳴った音
思わず木葉の顔を見たが、何見てんだ!いい加減自分でもてくそ野郎 って悪態つかれたので気のせいかと首を傾げた
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