及川



影山のファーストキス..同ヒロイン


突然の訪問を決め込んだ俺の彼女は何を思ってか、俺の部屋に来てからまるっと20分何を話すでもなく、さも自分の部屋かの如く持ち込んだファッション誌を読んでいた
こんなよくわからない行動を取るのは日常茶飯事なのでいちいち驚く事ではないが、なんだか感じる違和感が心をざわめかせた
何だ何だ
別に髪型が変わったわけでもないし、メイクを変えた形跡もない
でもやっぱり感じる違和感に彼女をじーっと見つめると、徹はやっぱりスカート派?なんて聞くから勿論と答えたが

「じゃあ彼女の浮気は許せる派?」

なんて質問に嘘だろと脳天に岩ちゃんのゲンコツもろに食らった時以上の衝撃が襲った
ぐわんぐわんと鳴る頭はめまいを起こし現実を逃避させようとするが、ちゅーは浮気ですか?ってちょっとまってホント勘弁して

『したの?』
「飛雄ちゃんとちゅちゅっと」

こんな感じって雑誌を放って俺の口の端というかもうなんかそれ唇かな?ほっぺかな?ってところに、触れるか触れないのキスをする名前
いや、もうこれキスとかそんなんじゃなくって飛雄まじダサいって思ったけどあいつの唇が一瞬でも名前に触れたと思ったら嫌悪しか感じない

「痛い痛い痛いまぢ痛い」

飛雄が触れたであろう箇所を思いっきり拭ってやったら赤くなったけど知らない自業自得
くっそぉー!と頭を抱える俺

「怒ってる?別れるの?」
『絶対いや』

怒ってるけどイライラしてるけど別れるのだけは絶対いや
名前が別れたいって言ったって絶対に別れてやるもんかと常々言ってるはずなのに、その言葉を言えばへにゃりとだらしなく笑うから可愛い

『てかなんで飛雄と会ってんだよ』

元気かなー?って会いに行ったとか馬鹿なの?大馬鹿なの??
わざわざ自分から行くとか本当に大馬鹿だけどそこもなんやかんや好きな所だから諦めるよ
俺にとっては生意気な後輩でも、名前にとっては可愛い後輩なのだ

『もう浮気しないでね』

ぎゅーっと抱きしめれば抱きしめ返される体
徹もしないでねってするか馬鹿
天下のモテモテ及川さんに一途に思われてるのを光栄に思って欲しい
好きすぎて岩ちゃん筆頭にチーム全員に気持ち悪いって言われた位だ

いつだって俺の後を追ってきたアイツは気づかぬうちに距離をどんどん詰めてきていて、それが無自覚だから尚たちが悪くって俺をイラつかせる天才だ
バレーでも負けるつもりは無いけれど、絶対にこの子だけは譲れない



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