影山



啄むようなキスをした
唇と唇が当たったか当たって無いかのキスは、誰がなんと言おうと俺のファーストキスだ
でも、おいおい少年こんなものかい? なんて目の前のファーストキスの相手に小馬鹿にされたら、プライドが気持ちをムッとさせる
目の前で余裕の顔のこの人はきっと、俺のファーストキスがファーストキスではない
そう考えるとムッとする気持ちはどんどん膨れ上がって破裂してしまいそうだ
彼女のファーストキスの相手が誰かなんて考えたくもないが、脳裏にちらついたのはただ一人の男

「徹のちっすはこんなもんじゃないぞ」

あははっと笑うこの人は俺の心中を知ってか知らぬか、どうもタイミングが悪すぎる
カッと血が頭に上った俺は勢いに任せて名前さんをその場に押し倒すが、ただそれだけ
俺はそれだけの男だ
バレーでも恋愛でも及川さんの後を追うばかり




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