木兎



歳の差を歯がゆく思った事が無いと言えばもれなく嘘になる
新調した制服に初めて袖を通した時、おふくろの皺になるって声も聞かずにチャリを漕いで向かう先はただ1つ
インターフォンを鳴らせばやっぱり来たなと言う顔で俺を出迎えた名前は髪が茶色になっていた
この不良めと言いたかったがもう彼女はそれを許されたのだ

「ちょっと見ないだけで凄い懐かしい」

部屋へと案内され、ことりと目の前に置かれたオレンジジュースを口に含むと酸っぱかった
名前も梟谷の出身で今年卒業した
まじまじ俺をというか、制服を見つめる名前はやっぱり髪色のせいかやけに大人びて見えて何だか別人みたいで変な感じで

「ネクタイ曲がってる」

ふわりと香った匂いが女の物だった
しゅるりと解かれたネクタイを器用に結びなおす名前の手を取ると視線が交合う
名前はさっきから何も言わない俺から何かを感じ取ってしまったのだろう

「どうせネクタイ結べないんだからちゃんと見てなさいよ」
『うっ』

じゃないとこうなるよってネクタイを目一杯締められ首が閉まり苦しそうな俺を見て、あははと笑う顔はやっぱり俺の知る名前と違ってて

「高校デビューしてさっさと彼女作んなさいな」
『うるせぇ...』

名前の手を払って再度口にしたオレンジジュースは酸っぱかったはずなのに味がしなかった


先行く君が遠すぎて


俺の長い初恋はいつ始まることを許されるのか



△ | ▽

9 / 13




- ナノ -