ベルトルト



今目の前で両手を広げて僕に抱っこを要求するナマエは皆から少し変わっている女の子と噂されていた
噂は噂な訳で実際興味も無く気にもしていなかった僕は痛感する
火の無い所には煙は立たないって

『どうしたの突然』

僕とナマエは初対面に等しい
入団直前に行われた通過儀礼の時にちらりと見かけた以来で

「訓練兵で1番背が高いんじゃないかって聞いた」

確かに高いのかもしれない
だからってそれが何だと言うんだ

「1番大きいということは1番巨人に近いって事でしょ」

巨人の見るこの世界が見てみたいという言葉に思わずドキッとなった心臓
少しじゃないよ、だいぶ変わっているよ君って

『付き合ってられないよそんなの』

食事も終えて訓練で汚れた体も綺麗にして後は眠るだけの状況
早く部屋に帰って睡眠をとりたい

「意外にケチね」

意外とは僕の何を知っての言葉なのだろうか
ちょこっとだけむっとしたけど、そういうことだからとその場から去ろうとすれば掴まれた手首

「明日のパンあげるから」
『別にいらないよ』

僕はサシャみたいに食い意地ははってない
やっぱりケチねと漏らすナマエはどうしたら僕に抱っこしてもらえるのかと真剣に悩み始めた
どうやら諦めるという選択肢は持ち合わせていないらしい

「きゃっ!」
『これで満足?』

この状況から早く逃れる方法はこの子を抱っこする事だとため息を1つついた後、しゃがんで太もも部分を抱えて立ち上がる
突然の事に驚いて抱き付いたナマエの胸がちょうど頬に触れた
これは計算外だ…
でも気にしないふりをしてすぐにナマエを下せば、早いと文句を言われたがご希望の抱っこはしたのだ、これ以上付き合う義理はない

『明日のパン持ってきてね』
「いらないって言ったじゃない!」
『貰えるものは貰っとく主義なんだ』

男子部屋に続く廊下を歩く
次の日ちゃんと朝食のパンを持ってきたナマエに少し驚きつつも

[いつの間にパンをもらう仲になったんだ?]
『いつだろ?』

ライナーに隠し事なんて少しドキドキした




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