リヴァイ



私の目に入っているのは左足ふくらはぎ部分がぱっくりと裂けたズボン
痛いと思うのはその奥で赤い液体を出す傷口ではなく、赤く染まるズボンを洗って縫って履くか新しいものを供給してもらうかである
血はなかなか取れないし、縫うのはめんどくさい
かと言って供給を頼むとまたかと嫌な顔をされる
それ程私は傷を負っては着衣を傷つけているのだ
あー洗って縫うかとため息を吐けば、そういう事じゃないだろうと目の前の上司に怒られた
彼は最初の内は何も関心が無いように訓練が終わればその場を去るのみだったのだが、ほぼ毎回の様に傷を負っては医務室に訪れると噂の私を心配したハンジさんが兵長に、訓練が厳しすぎるんじゃない?とどうもお節介な事を言った事に始まる

「これ位たいしたことないですよー!」

それより私はやっぱりズボンなんです
棚に入っている治療用具を探しつつ、医務室まで同行してきたリヴァイ兵長へ投げかければお目当ての針と糸を見つけた

『今回は縫う程酷いのか?』

眉間の皺を濃くして私を睨むが血が大げさに出ているだけで傷自体はどうって事は無い

「え?ズボンを縫うんですよ」

何言ってんですかーと笑いながら針に糸を通す
そして簡易ベッドへ腰かけて右膝へ左足を乗っけてズボンの裂け目部分を摘むと

「いった!何するんですかって本当に何するんですかァ!!!」

何故か思いっきり頭を叩かれて、兵長は私のズボンを裂け目から盛大に裂いたのである
ふくらはぎ半分より下から居なくなったズボンは無残にも後方に投げられた
もう縫うとか縫わないという話ではない

『傷をどうにかしろ馬鹿が』

ズボンが居なくなってあらわになったふくらはぎの傷
消毒液を染み込ませた布を当てられた時はちくりと鈍い痛みが走った
そして綺麗にまかれていく包帯がなんとも性格が出ていると言うか

『一応女だろ』

今回負った物のほかにも左足だけでも小さいのから大きいのまで複数ある
それが全身にあると言うのはやっぱり男から見れば女度ががくんと下がるのだろう

「良いんですって、私は気にしません!」

結婚する気も無ければ誰かと付き合って乳繰り合うつもりもない
兵士の任務を全うできればそれだけでいい

『お前が気にしなくても俺が気にするんだ』
「なんで兵長が気にするんですか?」

又叩かれた
さっきより強くは無いと言えど痛みはある
うるせぇクソがなんて

「あ、そうだ
ズボンの供給兵長がしてくださいよ!」

私はとても重大な事を思い出す
もう今履いているこのズボンは履けないのだ
幸い兵長のズボンサイズと私のズボンサイズはほぼ一緒なので!と笑えば今までとは比べ物にならない位の叩きが頭に入った



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