ベルトルト
「もう1回、今度はちゃんと景色を見せて」
昨夜と同じく両手を広げて僕に抱っこを要求するナマエは本格的に変わった子である
『昼間のパンはそういう事か』
ぼそりと呟き、頬を人差し指でぽりぽりと掻きながら今日1日を思い出す
今朝は約束通りにパンを置いて行った
そして何故か昼もパンを持ってきたナマエ
貰えるものは貰っておく主義なのでありがたく貰ったのだが、そういうことが隠れていたなら貰わなかったよ
めんどくさい
『人ひとり持ち上げるのって結構重労働なんだよ』
なんだって今日も食事も終えて訓練で汚れた体も綺麗にして後は眠るだけ
早く部屋に帰って睡眠をとりたいって時に又来るのか
「パン食べたでしょ!」
見てたんだもんってだから、そういうことが隠れていたなら貰わなかったって
彼女は何だってそんな僕に執着するのか
僕よりはそりゃ小さいかもだけど、周りに比べればでかいライナーに頼めば二つ返事でしてくれるだろう
そう、ライナーだよ
昼のナマエのパンはライナーと一緒に食べたから彼がそのパンのお礼をするのでも問題ないしと思いつき、ライナー呼んでくるよと男子部屋に向かえば
「ベルトルトじゃないと意味ないのッ」
慌てて腕を掴んで僕を静止したと思えば、顔を赤くしてごめんなさいと慌てて腕を離す
「だって1番大きいのはベルトルトで、だから、意味ないって言うか…」
自分で触ってきた癖にあわあわと手を見つめては、ごにょごにょと尻込みで最後は聞き取れない事を言うナマエを見て僕は気が付いてしまった
『好きなら好きって言えばいいんじゃないかな?』
君って回りくどいねと抱き上げるのではなく抱きしめてみると、ぎゃー!と叫びながらばたついた癖に、少しして躊躇しつつも背に回る手に笑いが漏れた
『ナマエここ空いてるよ』
スープとパンを乗せたトレーを手にしたナマエを隣へと誘うと、目の前に座ってスープを啜っていたライナーが目を見開く
「うぇ、あ、あっち、あっち空いてるから!!」
顔を真っ赤にして一瞬落としそうになったトレーを持ち直して足早に去っていくナマエ
[だからお前ら本当いつ仲良くなったんだって!?]
『いつだろ?』
ライナーそれはやっぱり秘密だよ
ナマエを見るとちらちらとこちらを見ている
手を振ってやれば持っていたスプーンをスープの上に落として服を汚していた
僕は、それを見て笑った
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