アルミン



テスト最終日
それは絶好の読書日和だった
テストと言う窮屈な物からの開放感で皆足早に学校を後にし、こんな日はクラブ活動も大抵が休みで、静かな図書室が一層静かな空間へと変わるからだ
自分もテストという窮屈な物のせいで読みかけの本も全然進んでいない
だからテスト最終日という絶好の読書日和に、溜りに溜った欲求を満たすべく図書室の扉を開けた
案の定な一層静かな空間へ足を踏み入れ、いつもの席に迷わず向かう
だが残念なことにそこには先客がいた
顔を机に突っ伏し、規則正しく上下する背中はきっと眠っている
確かにこの席は窓辺で日中から夕方日が暮れるまでにかけてぽかぽかな暖かな日差しが心地よい
寝るなら何処かへいけよなんて我儘は言えるわけも無いので、その場所は諦め、横に4つ程離れた場所に座った
十分そこでもぽかぽかとした日差しが心地よい
鞄から読みかけの本を出すと、以前エレンによくそんな細かな難しい本を読むなと言われた事を思い出す
別に対して細かくも無いし難しくないのにと思いながら本を開けば、しおり代わりにしていた何も変哲もない只の紙がひらひらと舞う
あぁ、しまったと舞う紙を追い席を立つと、ちょうど眠る人の足元へと着地した
小さい声で失礼しますと紙を拾おうとしゃがむと、ちょうど目線にカーデガンのポケット
そのポケットからはとても見慣れたストラップが規則正しく動く体に従順に微かに揺れていた
気にもしなかったので気が付かなかったが、栗色のくせ毛は同じクラスのナマエちゃんだ
特別喋るという間柄ではないが、誰とでも分け隔てなく接する彼女は友達も多い
あのミカサだってなついている位なので、相当だとは思う
そしてサシャがそのストラップ可愛いと騒いでいたので印象に残っていた
そうか、彼女かとしおり代わりの紙を拾って立ち上がると突っ伏して眠っていた彼女と目が合った
チラりとこちらを見ていたナマエちゃんは僕と目が合うと慌てて顔を隠すが、隠しきれていない耳が真っ赤

『落し物を拾ってたんだけど起こしちゃった?』

ナマエちゃんに聞こえるぎりぎりの小さい声で言うと、顔をがばっとあげて最初から起きていたから大丈夫!と言うじゃないか

『最初から?』
「あっ」

明らかにしまったという顔をして、耳と同じく顔も赤くする彼女は

「エレンから、テスト最終日はいつも図書館に本を読みに来るって…」

聞いたのと尻すぼみに観念しましたと言わんばかりに教えてくれたんだけど、なんだかそれって告白みたい

『本はすき?』
「ね、眠たくなっちゃう…」

だってそうでしょ
彼女が今ここに居る理由が、僕と一緒に居たいからという事しかないから

『甘いものは好きだよね』

開き伏せていた本に、しおり代わりの紙を挟んでその本を鞄にしまう
え?えっ?と状況の読み込めないナマエちゃんは相変わらず顔が赤かったけど

『ここじゃまともに君を知れないから』

駅前にできたって言うパフェが美味しいカフェにでも行こうかと誘うと、はにかんで笑った



△ | ▽

8 / 13




- ナノ -