ライナー



そっと腕を回し触れた背中は皆の知っている頼もしいあの背中ではない
十数年ほどしか生きていない割には立派に成長したものだとは思うが私は知っている
この背中が丸くなり、想像を絶する重圧に押しつぶされぬよう必死に耐えているのを

『ナマエ、ナマエっ…』

まさに今ライナーは必死に耐えていた
うわ言の様に何度も何度も呼ばれる自分の名が、酷く悲しい
変わってあげることも、少しだけでもいいから共有することも許されぬ私には、いくら嘆いたとしても決して泣かぬライナーの代わりに涙を流す権利はなかった
彼の背にそっと回した手にはいくつも残る傷跡
この傷跡はライナーが負っては消えた自傷の数

『ナマエ』
「すき、だいすきよ」

名前を呼ばれる度に愛を囁く
何度も何度も囁いては肩に預けられた頭にキスを1つ
そして肺いっぱいに息を吸い込めばライナーの匂いで満たされた
大丈夫、生きている


そっと腕を回しふれた背中は皆の知っている頼もしいあの背中ではない
この背中が丸くなり想像を絶する重圧に押しつぶされぬように必死に耐えているのを私は知っている
知っているからその背に思いっきり爪を立てた
溢れ出る悲痛な声が耳に届くが何度も何度も爪を立てては、満ち足りる心は狂っていたんだ
ずっとずっと前から

『ナマエ…すまん』

私は狂ってしまったんだ
きっとライナーのせいで



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