無償の愛をあげたい



私は諦めていた
極道の娘に産まれた者は幸せになれない
本当の私を見てと叫んだ所で向けられる目は何も変わらないだろう
只流れるままに生き、死ぬ

[名前紹介するよ、峯だ]
『はじめまして』

それで良かった
そんな運命に何も疑問は抱いていなかった
峯さんに会って、貴方に愛されてみたいと思う迄は
だから探るような事を言ってしまった

「峯さんはいつも何処か寂しそうだから、一心に見返りも求めず愛してくれる素敵な方を見つけた方がいいと思いますよ」

そんな人が峯さんには居るのだろうか
または、そうでなくても峯さんに愛される幸運な女は居るのだろうか

『そんなクソみたいなものを求め探す時間は俺には無い』

でも彼は心底不愉快そうな顔で言い切った
思わず溢れてしまった笑い

「気に触ったのなら謝ります」

そして隠しきれない喜びが溢れてしまわないように

「確かに無償の愛なんてクソみたいなものですね」

無償の愛なんてこの世に存在しないと私も思います
という私の言葉に驚き、峯さんは目を見開いていた
どうせ彼もまた私の事など世間を知らないお気楽なお嬢様とでも思っていたのだろう
ああ、峯さんにもそう思われているなんて分かっていたじゃないか
分かっていたはずなのに…

「それでも愛を無償で与えてもらいたいと貴方は強く望んでるでしょ?」

この悲しみはなんだろう
何も言わない峯さんの左胸に手を添える
目を瞑れば早い鼓動が手に届き、私の鼓動と同化する
初めて触れた峯さんはとても冷たい

「無償の愛なんてこの世に存在しないと私も思います」

目一杯背伸びをして首に腕を回した
そして首筋に今出来る精一杯を伝えるように唇をよせ

「それでも貴方にあげられたらいいのに」

私という全てを貴方が受け入れてくれるのならば



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