はじめましてこんにちは
『これをどうぞ』
デートを終えて家に到着した瞬間に渡された薬局の紙袋
『少し早いですが、そろそろ確認出来ると思うんで』
フライングって奴です と涼しい顔で言う義孝さんに反して、私はもう暑くもない季節に変な汗を大量にかいている
恐る恐る紙袋を開けて中を確認すると、やはり義孝さんの発言から思い浮かんだ物が入っていた
妊娠検査薬
ここまで来て自身の月ものが遅れているということに気が付くのは無頓着と言うのだろうか
それとも逆に、私の月ものの周期まで把握している義孝さんが頓着と言うのだろうか
『安心してください
ちゃんと俺は責任をとります』
むしろ陽性の方が嬉しいのですが なんてもうプロポーズではないのかと、普段の私なら舞い上がってしまっているだろう言葉なのに、今の私はどうしたらいいのかという思いでいっぱいいっぱいだった
気がついてしまえば心当たりがあり過ぎるのだ
月ものが遅れている事を筆頭に、普段から酷く現れるPMS症状が緩い気がする
「どうしよう」
妊娠してたらどうしようなんて、なんて無責任なのだろうかと思うけれど
(勿論そういう事をしているのだからもしもへの覚悟もあったし、義孝さんとの間に赤ちゃんが出来たらどれほど幸せなのだろうかと想像したこともある)
でもいざとなれば心の準備が欲しかったのも事実だ
震える手は今にも袋を落としてしまいそう
それに気がついた義孝さんは私の手を握る
『先程も言いましたけど、俺は名前さんのお腹に新しい命がある方のが嬉しいんです』
大丈夫です安心してください といつもの落ち着いた義孝さんの声に涙が滲んだ
『それに既成事実が出来た方のが話の進みも早いです』
貴女の周りには面倒くさい人が多すぎる
難しい顔をする義孝さんの言っている面倒くさい人というのが簡単に思い浮かんでしまった事に私は思わず笑ってしまった
(兄を筆頭に、1番厄介なのは真島の叔父様だろう)
そして私は義孝さんに見送られながら個室へと入っていく
はじめましてこんにちは
ハッキリと出た1本の線
私のお腹にあるまだまだ小さな命に向かって義孝さんが言った初めての言葉
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