貴方に会うまでの障害物



わがままを言った
たまには待ち合わせをしてデートをしようと
隠す素振りも見せずに面倒臭いを顔面に貼り付けた龍司さんを説得したのはつい数時間前
一緒に住んでいるのだからわざわざ待ち合わせなんて面倒な事をしたくないとは理解できるが、でも付き合い初めた当初のあのドキドキを久しぶりに味わいたいのだ

待ち合わせの時間少し前
待ち合わせ場所に到着して龍司さんを待っている間にそのわがままを言った自分を恨んだ

[暇ならお茶しようよ]

明らかに人と待ち合わせしてますオーラ満載な私に声をかけるお馬鹿さんの相手はしんどい
どこをどう見たら暇に見えるのか教えていただきたいくらいだった

「待ち合わせしてるんで」
[俺見てたけどその待ち合わせの人全然来ないからすっぽかされたんだよー]
「待ち合わせ時間まで少しあるんですっぽかされたとかではないんですけど」

丁寧にお断りを入れたのに食い下がる男は私を見ていたというが、私がここに来て5分位しか経っていないのは知っているのだろうか
たかが5分足らずですっぽかしなんてとんだご都合主義だことで

『ワシはこう見えても約束は守る男なんやけどな』

すっぽかすような適当な男に見えるか?と現れた龍司さんは笑ってた
声をかけてきた男の顔は引きつっていた
そして何か言ったが上手くききとる暇もなく去っていった
去っていく背中を見つめてると

『なんや?あの男と茶でも行きたかったんか?』
「そんな事!」

ある訳無いでしょと言う前に私は言わなければいけないことがある事に気がついて

「助けてくれてありがとう」
『ワシの女がモテモテで嬉しいわ』

お礼を言ったのに嫌味を言われたのは解せぬ
でも龍司さんの言わんとする事は分かったので私も大人しく引き下がる
(お前が面倒な事を言い出さなければ、こんな面倒な事は起こらんかったぞって事だ)

「もう待ち合わせしたいなんてめんどくさい事は言わない」
『それは助かるな』

私の手を引いて歩き出す龍司さん

『最近構ってやれんかったワシにも責任はあるし許したるわ』

茶でも飲むかと初めてデートした時に行ったカフェに足を向けた龍司さんに、覚えてくれてたのかと胸が熱くなり

「許してくれてありがとう」

握られた手を強く握り返した



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