キッド



目の前にある数字がびっしり書き込まれた紙には、以下の問いに答えなさいと容赦ない言葉が書いてあった
生憎その容赦ない言葉はよめたとしても、問の答えなんて分からない
これはお手上げだ
白旗ものだ
はふーっと息を漏らして顔を机に突っ伏すと静かな部屋にはカリカリと軽快な音が響く
ちらっとその音の元凶へと目線を移せば、数字がびっしり書き込まれた紙に更に数字を書き込むのが目に飛び込んで来て嗚咽が出そうになる
嗚咽を飲み込み、軽やかに数字を記入するために動く手から徐々に視線を上げて行けば泣く子も黙るような怖い顔
別にわざと怖い顔をしている訳じゃ無い
元からこういう顔なのだと分かっているからもう私は泣いていたところで泣き止むことはない
泣く子も黙らないって奴だ

『視線がうるせぇ』

少しして静かなカリカリという軽快な音だけが響く部屋に響いた声
じーっと顔を見つめていたのは認めるが、なんだか視線がうるさいって腑に落ちない
張本人は気にもしてない風で相変わらず数字を記入し続けている
視線だって1度もこちらに向けてないのに

「髪の毛下してるの変なの」

いつもは赤い髪をヘアバンドであげている
変なのと言いつつ実は結構好きだったりもするので、おりる前髪に触れてみるとぱっとその手を掴まれた

『教えてやろうか?』

初めて向けられた視線は笑ってて、器用に2人の間の机を隅に追いやったと思えばぐっと手を引かれて体制が崩れた私は、キッドの膝へと倒れた
何をするのだと言いたげに頭をキッドの膝に預けて顔を上げると、見えたのは天井とやっぱり笑ってるキッドで、何だか雰囲気で分かっちゃったから

「中間だから保健体育ないよ」
『スケベ』

どっちがって言いたかったけど、改めてキッドの顔をまじまじと見つめるとやっぱりかっこいいから私がスケベって事にして抱かれてあげた



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