きっとこれは夢なんだ



ずっとずっと好きだった名前に、ある日突然呼び出されたと思えば小さなメモを渡された

「私の番号が書いてあるんだけど…」

あーそういう事ですか
この展開にドギマギした頃が懐かしいと思える位にはもう慣れっこになってしまった自分が嫌になるが、超モテモテな仙道彰君の世話役をやってるもんだから諦めてる

『ちゃんと渡すから安心して』

返事は期待しない方がいいと思うけど と付け足してメモを受け取る
そして胸ポケットの中にしまって、じゃあなんてせめてカッコよく去りたかった
(アプローチも告白もする前に失恋なんて最悪だ)

「ちょっと待って!」
『うぇ!?』

それなのに去ろうとする俺の右腕を名前が掴むもんだから、驚きやら恥ずかしさやらなんやらで変な声出しちゃったじゃん
(めちゃくちゃカッコ悪すぎだ)

「渡すって誰に渡すつもり?」

心做しか名前が焦っているように思える

『渡すってそりゃ、仙道に決まってんだろ』
「私は越野くんに渡したんだけど」

だから俺に渡す=仙道ってことじゃん なんてダサいけど本当の事だからしょうがない

「私は、越野くんに渡したの!」

仙道くんじゃなくて、越野くんに! と顔を赤らめる名前
え?え?え?嘘まじ?
状況がよく理解出来なくて俺まで顔が赤くなってしまうのが恥ずかしかったが

「私は越野くんが好きなの」

仙道くんじゃなくて、越野くんが! とまさかの名前が俺の事が好きだという展開が夢なんじゃないかって思った


(ちゃんと受け取ってくれる?)
(あ、当たり前だろ!?)
(願ったり叶ったりだ)



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