目の前に見慣れた背中



私には少しだけ後ろを歩く癖がある、らしい
楓に言われるまで気が付かなかったこの癖は 私なんかが楓の横を歩いていいのだろうか という後ろめたさを抱いているという事を現してしまっていた
きっと楓はそんな深くまでは気が付いて居ないのだろうなと思っているが、バレないように隣を歩く時に気をつけて横を歩こうとする事で頭がいっぱいになり、それはそれで楓を不機嫌にさせてしまっているなんてとんだ悪循環に陥ってしまってる
不器用すぎる自分に嫌気はさすものの、性分を直すというのは簡単ではなく難しいもので

『はっきり言わないと俺分かんないから』

はっきり言わないとなんて言われた所で、はっきりと言えていたら苦労はしてない
口篭る私に楓は もう分かったよ とだけ言ってさっさと歩いていってしまう
歩くスピードが早すぎてこんな時に楓が如何に私に合わせて歩いてくれていたのかが分かる
少し先で息が上がる私を立ち止まって待っていてくれる楓の手を握った

「私は楓と釣り合ってるのか自信が無い」

だから横に並んで歩くのがいけない事をしてる気持ちになる
そうはっきりと言えたのは握った手を楓がぎゅっと握り返してくれたからだろう
私の言葉に何も言わず、更にぎゅっと握り返した楓は呆れたような顔をして



目の前に見慣れた背中



俺と歩きたくないのかと思っただろと少しだけ怒っていた



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