自転車の君は



白馬に乗った王子様はこの世に存在していないのだと知った小学校1年生
私にとってその事実はサンタクロースがこの世に存在していない事より衝撃的で悲しかった
今思えば、私自身がお姫様で無い時点で気がつけば良かったのだ
でも将来の夢がお姫様だった脳内お花畑には無理な話

「離してください」

高校に入学して間もなく
現実を知ったあの日からこんなにも大きくなった私は知らない男の人達に絡まれていた
遊びに行こうよ と言われた所で今から学校へ行かなければならない
少しだけ寝坊してしまった代償が大きすぎる
一向に離して貰えない右腕が少しだけ痛くなって怖いし泣きそうでどうしよう

[いってぇな!!]

そんな私の目の前で人が自転車に轢かれる事故がおきた
轢かれた男の人は直ぐに立ち上がったので命に別状は無さそうだが、逆に胸ぐら掴まれてしまった自転車に乗ってた男の人は大ピンチ
の筈なのに

「ま、待ってください」

一瞬でピンチから脱してしまった男の人が自転車に跨って何事も無かったかのように行ってしまいそうになるので急いで止めた

『なに?』
「助けていただいてありがとうございます」
『何が?』
「何がって…」

どうやら私を助けるために自転車で突っ込んできたのでは無さそうで、少しでも自分のためと舞い上がった自分が恥ずかしかった

『早く乗れば』
「え?」
『あんたも学校行くんでしょ』

そういえば男の人の着ている制服はうちの制服
そして腕時計を確認すると既に1限目が始まろうとしている

「失礼します」

お言葉に甘えて後ろに乗るとゆっくり走り出した自転車
最初は久しぶりな2人乗りにバランスをとるのが大変だったから気が付かなかったけど、男の人にこんなに近づいたのって初めてかもしれない
ドキドキと高鳴る胸がちらりと見えた横顔にドキッと更に大きく高鳴った


自転車の君は


私の白馬に乗った王子様
え、寝てる!?



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