いわゆるひとつの観察日記 (1/1)


 
 
6月1日

席替えして一週間。
出席番号順でよくね?
海斗の後ろだったのにな。
‥‥とか思ったけど、初日から面白いもん見れたからよしとする。

面白いもん、イコール、窓際後ろから二番目に座る沢渡海斗くん。
月曜日三時間目、窓の外を熱心に眺めてた。
ちなみに香奈のクラスが体育で、確か女子は今陸上競技だっけ。

まっ、海斗くんってば嬉しそうねー。

「何見てたの?」って休み時間になって聞いたらあいつ誤魔化すから、からかってやった。

「あ、今ジャージ脱いだ」って窓の外を指差したら「お前は見るな!」って怒り出した。

ちなみに脱いだのは長谷川だ。
長谷川ってのは30台前半の体育教師だ。しかも男。

海斗くんってば早とちりしちゃってさ。面白いヤツ。

そんなにあの子が好きなら告っちまえばいいのに。
いつまで黙って見てるだけなんだろう。
ま、あの子は全く気付いてないって香奈から聞いたけどさ。








9月1日

二学期が始まった。
海斗はインハイで全国四位に入賞したらしい。

ちょっと!始業式で表彰されるまで俺、なーんにも知らなかったんですけど!?

教室の外に女の子が集まってた。
いつもなら「タカシくーん」って話しかけてくれるコも、他の子と一緒に窓側の席で寝てるあいつにキャーキャー言ってた。
本人は全く気付いてない。勿体ない。

「何で言ってくれないのよ海斗くんの薄情者っ!」と拗ねたら「自分で言ったって自慢になるだけだろバーカ」って鞄で殴られた。
どこの爽やか君だ、お前は。

ちょっとムカついたけど(純粋に祝ってやろうと思ったから)、でもさ。生意気な親友でも祝ってやるのがイイ男ってモンじゃん?

「香奈に頼んでさぁ、水無瀬さんの生下着ゲットしてあげる」と言おうとしたら、「生下着ゲッ」の辺りで背中蹴られた。
半端ない威力だった。まるで香奈の飛び蹴りみたいで 背筋がゾクゾク 泣きそうになった。

冗談通じない男ってどうかと思う。








9月15日

夜、海斗から珍しく、つーか半年振りに着信があった。

なんとまぁあの海斗が告白した。

思わず第一声で「水無瀬さんにだよな?」と確認しちゃった俺だけど、まぁ仕方ないと思う。
お前知ってたのか?って聞くなバレバレだ。

いきなり告ったのか。
お前何もアピってなかったよな?普通、女の子は引くんだぞ、そういうの。

「水無瀬は驚いてた。けど、もう見てるだけから卒業したいんだ。これから俺頑張るわ」

だってさ。無計画というか何も考えてないけど、そう言われりゃちょっと応援したくなった。
つーか、無条件で応援するけど。


電話切って30分後。
今度はマイハニー香奈から着信。怒るハニーを宥める。

この前俺と二人で(イチャこきながら)作った「告白するまで」マニュアルがパーになったのを口にすると、どうやらそれを怒っているんじゃないらしい。
いきなり告ってあっさりフラれたらどうする気なのか、と怒ってた。

何だかんだ言って、香奈も幼馴染を評価してるらしい。
大好きな親友に水無瀬が相応しいと思っているんだから。

‥‥タカシくんぷちジェラシー。

明日ハニーにハグしてもらおっと。

余談だけどあいつも香奈も極度の電話無精だ。
いっそすがすがしいレベルだ。
俺が一番驚いたのは、そんな二人が携帯鳴らした事実そのものかもしれない。








11月1日

水無瀬さんの態度に微妙な変化を感じる。
海斗に声をかけられても固くなるのはなくなった。
顔を赤くして笑う。嬉しそうにさ。

‥‥‥これって完璧そうじゃん。

ま、鈍感海斗くんは可愛い笑顔に舞い上がってるから、そこまで気付いてないけど。
わざわざ教えてやるのはお節介でしかないよな。

それに香奈いわく、水無瀬さんは無自覚らしい。










11月27日

今日は楽しい文化祭。
海斗くんはメイドを拉致しました。
それから二時間くらいメイドコスの水無瀬さんを返さなくて、怒った香奈に命令された俺が代わりに働きました。
俺だってメイドの香奈ちゃんを拉致したかったのに!

今度海斗くんには焼肉おごってもらう約束してます。
あれこれ弱味を握れたので結果オーライってやつですね。

弱味とは、大きな声で言えないんですが

海斗くんはメイド萌





下からジュースとスナック菓子を取り、階段を上って部屋を開けようとしたタイミングでそれは聞こえた。
ぱたんという本を閉じる音と、がちゃがちゃとかばさっとか机のあれこれが床に落ちる音が重なる。

にんまり笑いながらドアを開けると、案の定真っ赤な野郎が一人。


「タカシっ!これは何だよっ!?」


あーあ、見つかっちゃった。
今日は散らかってるから遊びに来るなって言ってやったのにさ。


「それ?『海斗くん観察日記』、表紙に書いてるじゃん」

「そうじゃねぇ!なんでこんなモン書いてんのか聞いてんだよっ!」


俺が席を外した時に見つけたそれは、わざと置いたもの。
机の上に置き、わざと他の本を重ねつつ、表紙の「海斗」の文字だけ見えるように。
慌てて隠したという演出を施したんだよ、反応見たくてさ。

海斗のやつ、顔真っ赤にして怒鳴ってる。
怒りの余りノート破りそうだけど、俺の持ち物だからってギリギリ堪えてる感じだ。


「決まってんじゃん!愛でしょ」

「は」

「俺の海斗くんへのふかぁい愛!あい、アイ、I、愛‥‥‥なんちって」


だって面白いんだもん。


「タカシ」

「あはは。感動して言葉も出ない‥‥‥んじゃない、みたい、か、なぁ‥?」



「‥‥‥‥覚悟しろやテメェはぁぁっ!!」








その後うちの親が留守なのをいいことに、プロレスなんだかボクシングなんだかよくわからない乱闘になった。



これ書いたのってさ。
お前の結婚式で読み上げる為だって言ったら怒るかな、海斗。



いわゆるひとつの観察日記




大好きな相棒・月夜さんに捧げます。
お誕生日おめでとう!





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