短編 | ナノ


ルフィを見ただけでドキドキする。

例えば、朝。寝癖をつけたまま元気におはよーって言うとこ。二言目には「サンジ!メーシー!メシまだかー?腹へったー!」になるとこも可愛くて仕方ない。

それから、お昼前。よく甲板で釣りをするけど、釣れねーって言ってだらけてるとこ。でもその落ち込んだ分、釣れた時の喜び様が半端なくて、あのいっぱいの笑顔は直視できない。
だから釣りに誘われても見てるだけでいいって断っちゃう。

昼食時は、ちょっとだけ真面目な顔で話をしたりする。
「なぁナミ、まだ島に着かねーのか?」
「だからまだ一ヶ月はかかるって昨日言ったばかりでしょ!」
「ちぇー、つまんねーの。……あ、あの小島寄ってみよーぜ!」
「いらんことすんじゃないわよ!大人しくしときなさい!」
結局怒られちゃうことが多いけど。シュン、となってるルフィは小動物みたいで可愛いの。

夕方になると、サンジの作ったおやつに舌鼓を打つのをみんなで共有して。隙あらば、私のお皿を狙ってくる。それが嬉しくて、わざとポケッとしてるのはここだけの話。
「もー!ルフィ、それ私の!」
「にっしっし!いただきィ!」
いつものやり取りに、オチをつけるのはもちろんサンジ。
「クソゴムてめぇはななちゅわんのおやつを取んなって何べん言やぁわかんだよ!!」
「……ごべぶな"ばい"…、」


怒られても、いつも楽しそうな笑顔。見てるこっちまで幸せになれる。そんなルフィをいつの間にか目で追って、追って。


「なァ、なな?」

「ん?なぁに、ルフィ、」


甲板で夜空を見ながら呑んでると、風呂上がりっぽいルフィがやって来た。

……ルフィはいつも、目を見て話してくれる。
真っ直ぐで、何もかも見透かされるような漆黒よりも黒い瞳。
この瞳が好きで苦手。

でも夜なら。
空の黒と少し馴染んでくれるから、わたしもちゃんと目を合わせれるの。


「おめーはさ、いつもおれのことを見てんのか?」

「……え!?」


見てるのか、なんて。

……見てるよ、って答えていいのかな。


「おれ、ななにあんまり見てもらえてねぇ気がするんだけどよ、」

「……うん?」

「ウソップたちが、ななはおれのことをよく見てるっつーから、」

「え、」


…おーいウソップ、何を言ってるんだ?!
なんか一歩間違えたらストーカーみたいな響きじゃんか!


「でもおれはよくわかんねぇのに、ウソップたちがわかってんのは腹立つじゃねーか!」

「………えぇ?!」


いきなりヒートアップしだしたルフィ。
…わたしとルフィの距離が縮まって、あの、黒い真っ直ぐな瞳がすごく至近距離に来て。

目が、離せないと思った。



「だって、ななが見てるのはおれだろ?でも、おれはなながおれのこと見てんのを知らねーわけだ。おれのこと見てんのに、おれが知らねーでウソップたちが知ってるなんて悔しーじゃねーか!おれななのこと何でも知ってると思ってたのによー!!」











真っ直ぐなルフィが眩しすぎて直視できないわたしは間違ってはないと思うんだけど。


こんな口説き文句、熱弁しながら言われちゃうともうだめだよね。


「どうなんだ!?おれのこと見てんのか?!」

「う、……み、見てるよ!!でもルフィのその純真無垢な笑顔が眩しすぎて照れちゃって目を合わせれないからルフィはわたしがルフィのこと見てること知らなかっただけだよ!!ああもう恥ずかしいな!!」

「!にっしっし、なんだそっか、なな、照れてただけなんだなー、かわいーな!!(ニカリ」

「!!ああもうそんな笑顔で見ないで!!」



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