冒険の道程 中

一方その頃、グレートフォックスでは……。

「た、たたっ、大変だよ〜っ!フォックスのアーウィンの反応が、消えちゃった〜っ!!」

スリッピーの声に、一斉にメンバーが彼の元に集まる。
聞くに、フォックスのアーウィンが例の大型戦艦に近づいたとき、突如反応が途切れ、通信も繋がらないという。その言葉に、全員の脳内に1番最悪なケースが頭に浮かぶ。しかし、

「んなことで、あのフォックスがくたばるわけがねぇだろ!」

ファルコが間髪入れず叫ぶ。そしてそのまま扉の方へ向かう。

「どこに行くの、ファルコ!?」

それに1番に気づいたクリスタルが声をかけると、ファルコはみんなに背を向けたまま足を止め、口を開いた。

「んなもん、フォックスを探しに行くに決まってんだろ」
「でも、フォックスから指示が来るまでは…」
「そんな命令、俺は知らねぇな!つーかあいつが勝手に撃墜されてるのがそもそも原因なんだ。それを言い訳にしちまえば、筋も通るだろ。止めたって、俺は行くからな」

そしてファルコが一歩踏み出し扉が静かに開いたときだった。

「ファルコ…フォックスを頼んだぞ」

ペッピーがファルコの背に声を掛けた。今、このグレートフォックスに残されることになるみんなの思いを。

「…ああ。スマブラワールドについては、お前らよりよくわかってるからな。見つかり次第、すぐに連絡する。スリッピー、俺のアーウィンにフォックスのアーウィンの反応が消失したポイントを転送しといてくれ」
「うん、わかったよ!」
「ファルコ、気をつけて」

スリッピーとクリスタルの言葉を聞くと、ファルコは扉の向こうへと消え、格納庫へと駆け足で向かった。

「あのバカリーダー…見つけたら一発げんこつかましてやらねぇと、こっちの気が済まねぇ……!」


―――――


「へぇ〜!フォク兄、ドンキーの知り合いだったんだ!!」
「ああ。まさか君があのドンキーの相棒のディディーだったとはな…」

仲間に心配されている当の本人はというと、あの子猿、ディディーと共に森の中を進んでいた。
ディディーが助けたいというのは、フォックスがこのスマブラワールドで過ごしていたとき、共に切磋琢磨してきた仲間の一人のドンキーであったのだ。いや、無理矢理引っ張られる直前、一瞬名前を言ったときにまさかとは思ったが……。
でも、ドンキーの相棒となれば、先程の戦いぶりも納得いく、とフォックスは一人心の中で呟くが、ふと一つの疑問が頭に過ぎった。

「そういえばディディー、君はどうやってこのスマブラワールドに来たんだ?もしかして君もクレイジーに…?」
「クレイジー?そんな人、オイラは知らないけど…。オイラとドンキーは、マスターって人から送られてきたスマッシュブラザーズへの招待状っていうのを見て来たんだ」
「招待状…!?」

どういうことだ…?俺にもファルコにも、招待状というものは一切届いていない。しかし、俺たちをスマッシュブラザーズとして呼ばないのであれば、クレイジーがわざわざ俺たちに依頼をするなんてことがあるのか…?
となると、もしかするとマスターは招待状を送る途中に何者かに襲われたかさらわれたかしたのかもしれない。
フォックスはそう判断すると、もう一つディディーに質問をしてみた。

「なあディディー、じゃあその招待状をもらって行くことを承諾した後は、マスターが現れて、この世界に連れて来てくれたのか?」
「ううん。手紙にサインしたら、急にピカーッて光って、気づけばこの世界にドンキーと一緒にいたんだ」
「そうか……」

もしかするとマスターの有力な情報が手に入るかもしれない、と淡い期待をしていたため、内心少しばかり落胆してしまった。
ディディーがマスターに一度会っていれば、少しでも有力な情報となりそうなことがあったかもしれないが……そう簡単にはいかない、というわけか。
思わず溜め息がこぼれそうになるのを、ディディーの前だからとなんとか堪え、そんなフォックスなど気にも止めない様子でドンキーについて話し続けるディディーの話に耳を傾けることとした。
そのとき、フォックスはまた一つ質問することを忘れていたのを思い出し、口を開いた。

「そういえば……ところでディディー。ドンキーを捕まえたのは一体誰なんだ?あの口ぶりからして、知っているみたいだが…」
「あ、うん。それは……」

ディディーがその人物の名を出そうとしたときだった。

「クッパブレス!」
「「!?」」

二人は、こちらに向けて放たれた炎を、咄嗟に避け、その放たれた方向へと臨戦体勢で視線を向けた。

「この技、まさか…!!」

フォックスがそう口にしたとき、高笑いと共にその人物が木々の影から姿を現した。

「ガハハハハハ!さっきは取り逃がしたが、獲物がもう一体増えたというなら結果オーライ、というところだな!」
「クッパ!!」
「クッパ!今すぐドンキーを返せーっ!!」

フォックスは以前スマブラワールドで共に過ごしていた仲間に目を見開き、その横でディディーが食ってかかる勢いでクッパを睨みつける。

「ふん、そう簡単に返してたまるものか。返してほしければ、我輩に勝つのだな、ディディー!」
「ムキーッ!!」
「落ち着くんだディディー!挑発に乗れば奴の思う壷だぞ!」

今にも真っ向から行こうとするディディーをなんとか制し、今度はフォックスが口を開いた。

「クッパ、何故ドンキーをフィギュアにして連れ去ったんだ?お前は一体、何をしようとしているんだ?」
「お前たちにそれを言う必要などないな。我輩たちの目的にお前たちが邪魔である。ただそれだけだ。お前ら二人も、今ここでフィギュアにしてくれる!」

そう言うと、クッパは再びクッパブレスで二人に攻撃を開始する。
二人は再びそれを避けると、ブラスターとピーナッツ・ポップガンを構えた。

「これは戦うしかなさそうだな…!」
「絶対勝ってドンキーを取り戻すんだ!!」
「ディディー、接近戦ではパワーのあるクッパの方が有利だ。極力距離を置いて戦うぞ!」
「わかった!」

フォックスの言葉にディディーが頷き、同時にクッパへの攻撃を開始した。二人は一定の距離を保ちつつ、銃撃でじわじわとクッパの体力を奪ってゆく。そしてクッパが攻撃の射程内に入ろうと動くたび、持ち前の素早さで再び距離を置いた。
しかしこのままでは埒があかないのは明白であり、クッパをフィギュアにするにはブラスターとピーナッツ・ポップガンでは威力が足らないのだ。
フォックスもクッパも、互いに攻撃のタイミングを伺っていた。また、先に隙を見せた方が負けるということも考えていた。
お互いが一歩も引かない状況が続き、疲労の色が見えはじめ、クッパがフォックスを集中的に狙おうとしたとき、とうとうディディーが折れてしまった。

「よし、今だーっ!」
「なっ、ダメだ、ディディーっ!!」
「ガハハ、それを待ってたぞ小僧!クッパブレス!!」

フォックスが制止の声を上げるが間に合わず、ディディーはクッパの炎を浴び一瞬怯んでしまった。
そんな絶好のチャンスをみすみす見逃すわけがなく、クッパは一気に距離を詰め、ディディーに攻撃を仕掛けようとした。

「っ、くそ、間に合え!」

フォックスは走ってそちらに駆け寄りディディーを助けだそうとするものの、クッパの攻撃は目の前にまで迫っており、回避は不可能であるのは明らかだった。
そして…

「危ないっ!!」
「うきゃっ!?」
「食らえ!ダイビングプレス!!」

フォックスはディディーの体を、クッパの攻撃の射程範囲外へと押し出した。
しかし代わりに、フォックス自身がクッパの腕に捕まり、地面とその巨体の間に挟まれ、大きなダメージを負ってしまった。

「ぐあぁぁっ!!」
「あぁっ、フォク兄!?」

ディディーが名を呼ぶが、相当大きなダメージだったらしく、フォックスは起き上がることも間々ならないようだ。

「ガハハハハハ!まさか貴様の方を先にフィギュアにできるとは…こちらとしては願ったり叶ったりだ!フォックス、貴様が後に残った方が後々苦戦を強いられるのは目に見えているからな。これでとどめだ!」

そう言い、クッパはブルヘッドを放つ体勢となった。
もともと範囲が狭い技であるため、離れれば十分に避けられる技だが、今のフォックスはなんとか体を起こすことだけで精一杯で、逃げることも間々ならない状態であった。
それを受ければ、フィギュア化は免れない。

(くそ、ここまでか…!?)

フォックスが覚悟をし、目を閉じようとしたときだった。

「フォク兄はやらせない!モンキーフリップ!!」

ディディーがクッパの顔にしがみつき、視界を奪って技の体勢を崩したのだ。

「くそっ、離れろ!」
「今だよ、フォク兄!」

なんとか立ち上がったフォックスは、そのままクッパの巨体の下へ入り込むと、ディディーが離れたのを確認し、自身の足に力を込めた。

「今度はこっちの番だ…サマーソルトキック!」
「何っ!?ぐああぁぁぁっ!!」

フォックスの足蹴は見事にクッパを空の彼方へと飛ばした。
そして空から落ちてきたクッパは、二人から蓄積されたダメージにより、フィギュア化していた。

「よし、なんとか勝てたな…。ありがとう、ディディー」
「ううん、お礼を言うのはオイラの方だよ。助けてくれてありがとう、フォク兄」

二人はお互いに勝利を讃えあうと、フィギュアとなったクッパへと近寄った。

「さて、これからどうやってドンキーの居場所を聞くかだが…」
「うん、この近くにドンキーはいなさそうだしなぁ…このぉっ!」

ディディーがクッパのフィギュアに軽く体当たりをしたときだった。
なんと、クッパが紫の粒子に包まれると、そのまま姿が消えてしまったのだ。

「えぇっ!?これってどういう……!!?」
「! ディディー避けろ!」

驚くディディーに何かを察したフォックスが叫んだとき、黒い光線が二人へと放たれたのだ。
なんとかギリギリで回避することはできたが、放たれた先にはキャノンを構えて高笑うクッパの姿があった。

「残念だったな!今度こそ貴様らをフィギュアにしてやる…!!」

そしてキャノンにパワーを溜め、ディディーに向かって再び黒い光線を放ったのだ。
ディディーがそれを避けると、衝撃により辺りを炎が包む。
しかし冷静さを失ったディディーは、そんなことなどお構いなしと怒り任せにクッパに向かおうとした。

「よくもオイラたちを騙したなぁ!クッパ、今度こそ覚悟しろおっ!!」

ディディーがそのままクッパと戦おうとしたとき、得意の素早さで近づいたフォックスが、ディディーを掴み、そのまま敵とは逆の方向へ走り出したのだ。

「ここは一旦引くぞ、ディディー!」
「わきゃぁっ!?」
「なっ、待て!」

クッパが慌てて追い掛けるものの、パワーがある代わりに少しばかり動きの遅い彼が見たのは、近くの崖から下りる二人の姿であり、程なくして姿を見失ったのであった。


―――――


「…ここまでくれば、クッパも追っては来ないだろう」

でも、一度戦闘をした直後の全力疾走はさすがにくるな…と内心苦笑いをこぼし、乱れた息をなんとか落ち着かせる。
と、ふとディディーが先程から一言も言葉を発しないことに違和感を覚え、そちらに顔を向けた。と同時に、顔を俯かせたままディディーがぽつりと呟いた。

「…どうして……」
「……?」
「っ、どうしてクッパから逃げたんだよフォク兄!さっきの、クッパを倒すチャンスだったじゃないか!どうして…!?また、ドンキーを見つける手がかりを一から探し直しじゃないかぁ……!」

思わず瞳に涙を浮かべながら、ディディーは自身よりも少し大きい胸をドンドンと叩いた。折角のチャンスだったのに…!もしこのままドンキーを助けられなかったらどうしよう……!!
嫌な思考が頭を占め、正常な判断をすることができなくなってしまっていた。
すると、黙ってディディーからの小さな攻撃を受けていたフォックスは、力強くディディーの肩を掴み、それを止めさせた。

「…よく聞いてくれ、ディディー」

ディディーと身長を合わせるように腰を屈め、フォックスは真剣な眼差しで顔を見つめた。するとディディーもようやく顔を上げ、フォックスの翠の瞳を見た。

「さっきの偽者のクッパに、俺たちは勝った。だけど、その勝利がギリギリだったっていうことはわかるよな」
「……うん」

ディディーが小さく頷いたのを確認し、なるべく優しく、またわかりやすい言葉を考えながら続けた。

「じゃあ、そんなギリギリの戦いをした直後の俺たちと、あんな大きな武器を持ったクッパが戦えば、どっちが勝つと思う?」
「それはっ………」

声を詰まらせたということは、ディディーもわかってくれている、ということだよな。そのことにフォックスは安堵し、再び続けた。

「そう、きっとクッパが勝つ可能性のほうが高い。そして今俺たちが倒されたら、一体ドンキーは誰が助けるんだ」
「!! …そっか…オイラたちが今やられたら、誰もドンキーを助けられないんだよね……フォク兄はそこまで考えてたのに……ごめんなさい」
「誰にでもそんなことはあるさ。俺だってディディーの立場だったら、もしかすると同じことをしてたかもしれないしな」

そう言って優しく微笑むと、落ち込んでいたディディーも安心したのか、少し元気を取り戻したようだった。

「じゃあまた、早くドンキーを助けに行かなきゃね」
「ああ。クッパがそのまま捕まえている様子はなかったから、もしかするとクッパの仲間がドンキーを別の場所に運んでいる可能性もあるしな」
「へ〜、さすがフォク兄!頭いい!!」
「まあ、1番手っ取り早いのはクッパから聞き出すことだが…とにかく探そう」
「うん!」

そんな会話を交わしたあと、二人は森の中を進んで行った。


―――――


「…ん、あれは……!!」

その頃、スリッピーに転送してもらった座標周辺を飛んでいたファルコは、湖の辺にボロボロになったアーウィンを発見していた。
急いで側に降り立つと、彼はそのアーウィンの持ち主の名を呼んだ。

「フォックス!!」

そのまま駆け寄りコクピットを覗くと、ハッチが開かれており、そこはもぬけの殻であった。
なんとか1番最悪なケースは免れたようで、ファルコは安堵の息を吐き、肩から力を抜いた。
しかし、フォックスの奴は一体何処に行ったんだ…?
外からのハッチの開け方はチームのメンバーしか知らないため、フィギュア化などして連れ去られたということはなさそうだし……自主的に開けたとしても、通信システムくらい直そうとするだろうが、それをした痕跡も見当たらない。

「…こりゃ厄介事にでも巻き込まれやがったか……ったく、通信の一つくらい寄越せっていっつも言ってんだろーが」

ファルコは一人そう呟き、めんどくせぇとがしがし頭をかく。が、それで仲間を見捨てるような彼ではない。
ファルコはアーウィンに乗り込み、再び人迷惑なリーダーを探しにそこから飛び立ったのであった。















本当は前後編の予定でしたが、纏められませんでしたε(*´・ω・)з
クッパの口調あやふやですね…そこはもっとしっかりせねば。
あと、相変わらず戦闘シーンド下手で申し訳ないです(m´・ω・`)mどんな戦いしてるのか、よくわかんねぇ……

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