冒険の道程 前

それは、グレートフォックスが受けた通信からはじまった。

《お前たちに、どうしても頼みたい依頼があるんだ》

画面の向こうにいる白い左手…スマブラワールドの破壊神、クレイジーから依頼を受けたことからはじまった。
その依頼というのは、突如行方不明となったマスターの捜索と、スマブラワールド内で起きはじめた異常現象の究明というものである。クレイジーの力で、グレートフォックスはその通信以前にいたライラット系の宇宙よりスマブラワールドの上空に移動し、雇われ遊撃隊の作戦会議がその中で行われることになったのだ。

「マスターに関する情報は皆無で、異常現象ってのもどっかの誰かがなんかのために影虫ってのを撒き散らして荒らしてるっつー漠然としたもんかよ…どうすんだ、リーダー?」

さすがの情報の少なさにファルコは眉を潜めつつも、フォックスをリーダーと呼んでくれているあたり、どんな作戦であってもきいてくれるのだろう。
確かに、普通なら下手に手を出すわけにはいかない状態であるのだが、それを解明するのが任務となれば手を出さないわけにもいかない。危険だとわかっていても、だ。それが雇われた側の筋というものだよな。
話は少し脱線してしまったけど、とにかく今はこれからどうするかということだが……。

「そうだな…まずは俺一人でもう少し情報を集めてみる。それから様子を見て、その後の行動は伝える。それでいいか?」

それからみんなの顔を見るが、誰一人として異論はないようだ。
それに少しばかり安堵しつつ、少し間を空けて続けた。

「スターフォックス、作戦開始!」


―――――


グレートフォックスからアーウィンを飛び立たせ、そのままスマブラワールドの空を駆け抜けた。
どこに行けばいいかということはわからないが、スマブラワールドの異常事態は全域で起こっているらしいため、もしかすると遭遇するかもしれないという淡い期待を込めて。
すると、突如グレートフォックスから通信が来た。

《フォックス!そこから右斜め60゜へ7km進んだところで大きなエネルギー反応を感知したよ!》
「そうか、ありがとうスリッピー」
《何か嫌な予感がするの…くれぐれも気をつけて、フォックス》

クリスタルからの言葉に頷き通信を切る。クリスタルが感じるほどとあれば、本当に気をつけないとな。
そう肝にめいじて進むと、何やら謎の大きな黒い球体が見えてきた。
恐らく、これがスリッピーの感知したエネルギーの正体だと思うが…一体なんなんだ?ただ、近づいてはいけないという本能に従い、しばらくその周辺を旋回した。
もしかすると、これもクレイジーの言っていた異常現象なのかもしれない…。一応、スリッピーに解析を頼もう。

「こちらフォックス。スリッピー、あのエネルギーを感知した場所で謎の現象が起きていた。解析を頼みたい」
《了解だよ!あ、それとね、その近辺でグレートフォックスなんてめにならないほどの大型戦艦の反応があるんだ。味方ならいいんだけど…》
「ああ、わかった」

この近辺にいるとなれば怪しいな…。もしかすると、その大型戦艦がこの現象を起こしたという可能性もある。
スリッピーに転送してもらった座標に向かって、アーウィンを走らせた。


―――――


「あれがあの大型戦艦か…!」

まだ距離はあるが、例の大型戦艦が見えはじめた。確かに、グレートフォックスの何倍もの大きさは裕にある。
敵か味方か判断すべく、スピードを上げ、一気に距離を詰めた。
するとこちらの存在に気付いた戦艦は、容赦ない砲撃の雨を浴びせてきたのだ。
くそ、やっぱり敵ってわけか…。

「あんなやつを相手にするとなると…骨が折れそうだな」

思わず呟き、苦笑いがこぼれるが、とにかく反撃の機会を伺いながら敵の砲撃をかい潜る。
しかしそちらに気をとられていたせいで、戦艦からアームが放たれたことに気づけず、不覚にもアーウィンに直撃してしまった。

「くっ、しまった!」

体勢を立て直そうとするが、当たり所が悪かったらしく制御がきかず、そのまま雲の下へと墜ちてしまった。


―――――


「こちらフォックス。ファルコ、スリッピー、クリスタル、ペッピー、ナウス、聞こえるか。こちらフォックス。グレートフォックス、応答せよ。……やっぱりダメか」

そう呟くと、フォックスはインカムから手を離し、一つ溜め息を吐いた。
大型戦艦からの攻撃を受け撃墜されてしまったアーウィンは湖畔に不時着した。幸い、フォックス自身は落下の衝撃は受けたものの、傷一つ負ってはいなかった。しかし、アーウィンは再び飛ぶことはできない状態のうえ、通信システムは落下の衝撃で使えなくなり、通信機も電波をジャミングされているのか、ただノイズが流れるだけであった。
せめて自分の無事だけでも伝えられたらいいのだが……。
アーウィンの通信システムだけでも復旧できないかと、念のためと機内にある小さな工具セットを取り出し、できる範囲の修復をしようとした。そのときだった。
ふと、フォックスは外が騒がしいことに気がついた。
ガラスの先へと視線を向けると、湖に緑の竜と、その竜に怯えている子猿の姿があった。
竜の攻撃な視線に、これはただ事ではないと直感的に思ったときだ。
緑の竜が、フォックスの乗っているアーウィンに向かって光線を吐き出したのだ。
もともと宇宙で戦う戦闘機であり、大気圏の熱にも耐え切れるよう設計されているアーウィンは、それくらいの攻撃では大破することはない。
しかしフォックスはその直後に竜に捕まった子猿を助けるべく、自らハッチを開け、飛び出した。

「フォックスイリュージョン!」

フォックスは得意の俊敏な動きで、子猿を捕らえている方の竜の腕を攻撃し、そのダメージにより竜が子猿をその手から離した。フォックスはそのまま地面に降り立つと、それを狙って竜はフォックスに向かってアーウィンに放ったものと同じ光線を放ったの。
もちろん、その攻撃をあらかじめ予想していたフォックスは、左の腰に備えていたリフレクターを展開し、その光線を反射して竜に大きなダメージを与えることに成功した。
しかしそれだけで撤退する敵ではないことは裕に察しできていた。

「君、立てるか?」
「う、うん!えっと…」
「悪いが、自己紹介は後だ。今はこいつを倒すことを優先するぞ」

子猿にそう言うと、再び反撃をされる前にホルスターからブラスターを取り出し、奴を地上におびき出すため、体中を狙い撃つ。湖の中にいられては、空中戦でしか戦えないこちらには不利になり、水の中に落ちればうまく身動きが取れなくなり、そこを狙われてしまえばおしまいだ。
そこまでのことは考えてはいないと思うが、子猿の方も木でできているように見える銃を取り出し、同じように竜に向かって攻撃をはじめた。
すると竜も挑発に乗り、地上へあがり、こちらへと突進してきた。
それをフォックスは緊急回避で避け、子猿は背中に銃と似たジェットで上空に避けた。
そんな戦闘慣れしているわけではないが勇敢な姿に、フォックスはこの子はもしかすると…と思うが、今は戦闘に集中だとその思考を振り払い、動き回って敵を翻弄しつつ、ブラスターで体力を削っていく。
そして、竜が二人からの止まない銃弾の雨に一瞬怯んだのを、フォックスは見逃さなかった。
すぐに素早い動きで間合いをつめ、その身に炎を宿す。

「これで終わりだ…!ファイアーっ!!」

フォックス渾身のファイアフォックスを受けたことに竜は崩れるように湖の中へと潜っていった。
念のため、再び攻撃されるのではないかと二人は攻撃体勢のまま待つが、竜が湖の中からあがってくる気配はなかった。

「…よし、作戦完了!」
「やったやった!勝った勝ったーっ!!」

竜に勝利したことを子猿は跳びはねながら喜ぶが、フォックスはそれどころではない、とすぐに自身を切り替え、ボロボロになってしまったアーウィンの元に向かおうと足を向けた。が、

「ちょっと待って!」
「うわぁっ!?」

さっきまであんなに喜んでいた子猿がフォックスの襟元を掴み、それを阻止したのだ。
何事だとその子猿の方を向くと、興奮した様子で早口で話し出した。

「ねえねえ、オイラ、どうしても助けたい人がいるんだ!ね、だからオイラを手伝ってよ!」
「すまないが、俺も暇じゃないんだ。早くみんなに無事を伝えないと…」

そう断りを入れてアーウィンの元に向かおうとした。だが、

「あの竜をやっつけられるくらい強いんだからいいよね!一緒にドンキーを助けに行こう!」
「ちょ、ちょっと待て!」

再び襟元を掴まれ、こちらの制止も聞かず、そのままずるずると引きずられる。
ダメだ。こういうタイプはいくら言ってもなかなか聞かないタイプだ。つまり、自分が折れるという選択肢しか残らないことに、思わず溜め息が漏れる。
その間にもアーウィンからの距離は離れていき、もはやあそこに戻ることはこの子猿の頼みをきくまでは絶望的である。
スリッピーやペッピー、クリスタルは勿論だが、冷たいように見えて1番仲間想いのファルコはきっとすごく心配しているに違いない。

―みんな、すまない。電波が良くなったら、すぐに通信する。

今だにノイズしか流れない通信機が早く繋がるようになることを願いつつ、グレートフォックスで待つ仲間達に心の中で謝り、子猿にただ引きずられて行った。















亜空の使者のフォックス、ディディー、ファルコのお話です。
ちなみに、我が家の亜空設定では、マスターがタブーに操られている間、影ながらクレイジーが手助けをしていたという設定です。いや、だってボスバトルにはいても、本編にいなかったし…←
あと、ここではまだ直接触れてはいませんが、歴戦のメンバーはみんな互いに顔見知りです。で、ディディーもレックウザもフォックスは知らないと思うのであえて今回は緑の竜と子猿と表しました。
ちょっといろいろ矛盾しているところとかありそうですが、まあ流してやってください←

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