甘え下手なお姫様

トントン、と何度も部屋中にこだまする音に、俺は眠りの淵から呼び覚まされた。
時計を見ると、短い針は数字の1を少し過ぎた頃であり、さすがにダック荘内も寝静まっている。
しかし、尚も遠慮なくトントンという俺の部屋の戸を叩く音は鳴り止む気配がない。
非常識にも程がある。一体誰だ。と怒りをおぼえつつ扉を開けると

「………」
「ヒカル?」

両腕で枕を抱き、不機嫌そうに眉間に皺を寄せたヒカルの姿があった。
名前を呼ぶも、ヒカルは無言で俺の断りもなくずかずかと部屋の中へと上がり込むと、そのままベッドに腰をおろした。俺のものであるが。
アラタと喧嘩でもしたかと思ったが、それなら枕まで連れて来るわけがない。ヒカルの考えが理解できず、薄暗い闇の中でも輝く月光のような金の髪と、星のような蒼い瞳を見つめた。
俺の視線に気づいたからなのか、ようやくヒカルが言葉を発した。

「…遅い。おかげで手が痛くなった」
「そんなことよりも、他に言うべきことがあるんじゃないか、ヒカル」

ヒカルの言葉に、今度はこちらが眉間に皺を寄せる番だ。

「こんな時間、本来ならば寝ていなければならない時間だ。なのに何故こんなことをした」

ウォータイムのときのように厳しく追求する。しかしヒカルは不機嫌な顔を崩さないまま答える。

「眠れないから、ハルキの部屋に来た」
「それだけの理由なのか?」
「…アラタは起こせば煩くなるし、サクヤは僕らの為によく徹夜で作業してくれてるから、折角寝てるのを邪魔したら悪い気がした」
「俺には悪いと思わないのか。こちらもつい先程まで眠っていたんだぞ」

内心、アラタのことは同意するし、サクヤのこともちゃんと考えていてくれていることに感心はした。が、それでは理由としては足りない。まず第一、他人の部屋に来る理由がないだろう。
ヒカルの眉が吊り上がったのが見え、何を言われても言い返せるよう身構えた。

「っ、ウォータイムで、僕はハルキの命令を聞いてあげてるんだっ。なら、今くらい、僕の言うことだって聞いてくれてもいいだろ!」
「それとこれとは関係ない!」
「関係ある!不平等だ!」
「そんな屁理屈、通るとでも思っているのか!」

そこまで言い、ふと思い出す。こうやってヒカルが俺に対してだけ我が儘を言うのは、今回だけではない。むしろ、俺の命令をちゃんと聞きはじめた頃から、日に日に酷くなっていっているようにも思える。
それに加えて、コイツは相当な頑固者だ。まだ出会って日は浅いものの、理解できた数少ないヒカルの性格であり、厄介な部分だ。
このまま言い争いを続けても、ヒカルは絶対に折れないのは目に見えた。勿論たとえ負けても、だ。
きっと今夜は眠らせてくれないだろう。そうなれば、明日の学校生活だけでなく、ウォータイムでも他の仲間に迷惑をかけてしまうこととなる。それだけはなんとしても阻止しなくてはならない。
しょうがないんだ、と自分き言い聞かせ、再びヒカルと向き合った。

「…なら、俺は一体何をすればいい」

腹をくくってそう言うと、一瞬だけヒカルの瞳が嬉しそうにきらきらと輝いた気がした。が、すぐに冷静さを取り戻し、いつものヒカルに戻ってしまった。
そして何事もなかったかのように、俺の枕を少し横にずらし、その横に抱いていた自分の枕を置くと、そのまま猫のように丸くなった。

「じゃあ、僕と一緒に寝ろ。それと、ドアを叩きすぎた右手もまだ痛いから、優しく手を繋げ」

まったく、相変わらず上から目線だな…と小さく溜め息を吐くと、ヒカルの横に寝転び、左手でヒカルの右手を握り、空いた右手で掛け布団を引っ張り上げた。

「おやすみ、ヒカル」
「…おやすみ、ハルキ」

応えてはくれないだろうと思いつつ恒例の挨拶を言ってみると、小さく返ってきたアルトの声に少しばかり驚いてしまった。
それからしばらくすると、規則的に小さな呼吸が鼓膜をくすぐり、なんだかんだ言っていたが、眠れたじゃないか、と安堵した。
と、そこでようやくヒカルの考えが理解できた。
これがヒカルの不器用ながらの甘え方だったのか。
そうでなければ、こんなに嬉しそうに安心した顔で眠れるわけがない。
これなら、まあしばらくはこんなヒカルのわがままにも少しくらいは付き合ってもいいかもしれない。
そう思いつつ、俺は左手から伝わるヒカルのぬくもりを感じながら瞼を閉じた。

その後日。

「ハルキ、僕は紅茶が飲みたい」
「買ってくればいいんだな」
「なあなあ、ハルキはいつヒカルのパシリn」
「こらアラタ!」

こんな第一小隊の姿が見られたそうな。





某神様の女王様ヒカルくんと忠犬(?)ハルキ隊長にやられて書いてみようとしたら……これ、女王様じゃなくて、我が儘な世界で1番お姫様だよ……orz
ハルキ隊長も普通に隊長だし……口調もあやふやだしオワタ\(^O^)/
しかも授業中に勢いのまま書いていたものを少ししか推敲せず書いたので、おかしいことも多々ありそうで…てかハルキ隊長、一人部屋でよかっただろうか…?

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