10000hitフリーの続編

「今日から俺達雷門部隊へと配属された剣城京介少尉だ。これから戦う仲間として、仲良くやっていこう」
「よろしく、お願いします」

そうやって小さくお辞儀をする姿を見て、律儀な奴だな、と思ったのと同時に、思った通りのいい奴だと思えた。
以前剣城が所属していた黒騎士部隊は実力は相当あるものの、冷酷で残虐な集団であると聞いており、あまり関わりを持つことを俺自身拒んでいた。
しかし、先の戦いで出会った剣城はそのイメージをいとも簡単に壊すような存在だった。
剣城京介少尉。黒騎士部隊屈指の実力者であり、警戒していた人物の一人であった。しかし実際に触れてみると心は暖かく、何故かそれに惹かれていた。気が付けば、円堂中将に自ら剣城の雷門部隊への移動を懇願していたほどだ。
今俺の思考回路を埋めている当の本人は、天馬達同期と賑やかに話を弾ませている。
いいことであるのには変わりないのだが、ふと胸のあたりにチクリと小さな痛みを感じた。
疑問に思いそこに手を当ててみたが、おかしなところはない。別に怪我をしたわけではない。だが、そんな剣城たちの姿を見つめていると、胸の痛みはじくじくと広がっていく。
この痛みは一体何なんだ…?
不可解な痛みに頭を悩ませたとき、肩に重みを感じた。

「神童!」
「えっ、あ、な、何だ、霧野?」

俺の名を呼んだのは霧野蘭丸大尉。幼なじみであり、時に俺の補佐をしてくれる頼れる仲間の一人だ。

「神童があの黒騎士部隊から一人引き抜くって言った時は驚いたけど、まさかあの部隊にもあんないい奴がいたんだな」
「剣城の心は暖かかったからな。部隊の戦力も格段に上がるし、天馬達も喜んでるし…」
「…へぇ…あの警戒心の強い神童にそこまで言わせるなんて……なかなかな奴なんだな」

霧野は一瞬、その整った顔の眉間に皺を寄せたものの、すぐいつもとなんら変わらない様子になり、倉間と浜野、速水、錦、一乃、青山といった同期の面々を呼んだ。
そうだった。剣城に早くこの雷門部隊に慣れてもらうために、一時的にでもバディを俺達で決めようとしていたんだった。
今まで決めていなかったのは、剣城がどんな人物かわからないのに押し付けるように決めるのは気が咎めたからだ。
先程までの考えを頭を小さく振って振り払うと、いつも通り冷静に口を開いた。

「じゃあ、剣城のバディを決めようと思う。ちなみに、バディが着くことは本人には事前に告げてある。希望する人はいるか?」

言い切ってから、ゆっくりとみんなを見回す。
……が、誰一人として手を挙げる者はいなかった。
…おい、これはどういうことだ。怪訝に思ったものの、それが表情に出ないよう最善の注意をはらいつつ、一人ずつに声をかけてみるか。

「なあ倉間、部隊の最前線で戦う者同士だから…」
「俺の柄じゃない」

……だよ、な。なんとなく予想できていた。
よし、じゃあ次だ。

「浜野と速水はどうだ?」
「俺は怖いから無理です…浜野くんなんて剣城くんの足を引っ張るだけですよ」
「ちょ、速水〜、そんなの、やってみなきゃわかんないっしょ!」
「やらなくてもわかりますよ。同意見で錦くんもですけど」
「ワシは自分のことで一杯一杯ぜよ!」

速水の言う通り、浜野と錦は心配だな。
それじゃあ次は、

「…多分ダメだと思うが、一乃と青山は…?」
「ゴメン。やっぱり無理…」
「前、黒騎士部隊の奴らにボコボコにされたし、さ…」

だよなぁ。一乃と青山達は、今はない雷門部隊の二軍に所属していたのだが、軍内で内乱が起きた際に、黒騎士部隊に部隊を壊滅させられた経緯があった。
剣城が悪くないのはわかっているが、やはりそれがまだトラウマになっているようだ。
溜め息を吐きたくなるのを我慢しつつ、最後の頼みの綱を見た。

「霧野は……」
「ごめん神童、狩屋の世話で精一杯だ」

その言葉を聞くと同時にがっくりと肩を落とした。
三国先輩達は防衛重視の後援隊であるため、攻撃重視の前線隊の剣城とでは組みづらいということで俺達で組もうとしたのに…これでは意味がないじゃないか。かといって、まだ経験の浅い天馬達と組ませるなんて、もってのほかだ。
どうしたものか、と頭を抱えたとき、不意に倉間が口を開いた。

「じゃあ神童がやればいいだろ」

全く予期していなかった言葉に、一瞬で頭が真っ白になる。
…え、俺が、剣城の……?

「いやいや、ちょっと待て。俺は司令塔という役割が…」
「神童が円堂中将に頼んで配属させてもらったんだろ。なら、最後まで面倒みろよ。それに剣城が傍にいれば、もしものときも心強いだろ」

疑問形でなく断定形で反論されてしまえば、否定することもできなくなってしまった。
言葉に詰まっている間にみんな次々と賛成していく。…あぁ、逃げ場なんてなさそうだ。
しょうがない、腹を括るか。
そう思った反面、胸の高鳴りを感じた。剣城とバディを組めることになんとなく喜んでいる…?
自分自身のことなのに全くわからない。今日の俺はなにかおかしいみたいだ。
内心その事実に首を傾げつつも、決定事項を伝えに剣城の元へ向かった。

「剣城」
「…なんですか、神童先輩?」
「これからしばらくの間、俺がお前とバディを組むことになった。改めて、よろしく」
「!!……こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

そうやってまた律儀に頭を下げる姿を微笑ましく思い、自然と口角が緩まる。
だが、ちらりと見えた俺よりも色白な顔が赤く色づいていたのが少し気掛かりだった。
…体調管理も、しっかりさせておかないとな。





―――――

「むすー…」
「なーにムスッとしてんですか、霧野先輩?」
「…なんだ、狩屋か……。その、なんか神童が剣城に心許しすぎてムカつく…」
「ふーん、嫉妬してるってわけですか。それって親友、幼なじみとしてですか?それとも恋愛対象としてですか?」
「どっちかはわからないけど…どうせ入る隙間なんてないんだろうな」
「ですね〜。二人とも見るからにって感じですし。というか、あんなバレバレなのに二人ともなんで気づかないんだ…いったぁっ!!」
「ごめん。なんかイラッときた」





10000フリーの続編です。元々は三部作くらいの予定だったので勢いままに当時は書きましたが、三部目の内容を八割がた忘れてしまい、こちらも続く予定はないかと…←
軍隊パロで、俺設定満載とまさに通常運転な内容ですね。京拓というよりは、京→←拓となってるように思いますが(;^ω^)

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