帰り道

「ねえマサキ、あのオリオン座の赤い星、見えるかい?」

…またはじまった。ヒロトさんの星の話が。
気づかれないように小さく一つため息を吐くと、二つ返事で答えた。

「赤い星って、もうすぐ命を終えようとしてる星なんだ。しかも地球から見える星の光は何百年、何千年も前のものなんだって。だから、あの星はもう、宇宙には存在していないのかもね」
「…そうですね」
「でも、オリオン座はここに存在している。あの星があったからこそ、ここにあるんだ。だから、もしこの宇宙から消えてしまっても、ここにいたってことは確かに証明されてるんだ」
「………」
「俺たち人間も、この宇宙に存在していた証明を、残せることができるのかな?……いや、円堂くんみたいな人なら、できるかもしれないね」

同じ言葉を、今まで何十回も聞いていた。
今までなら、「あー、はい。そうですね」と言って終わりのはずだった。
だけど、今はその言葉が喉から出て来ることはなかった。
宇宙に存在していた証明を残す……きっと天馬くんや剣城くん、神童先輩ならできることだと思う。いや、この三人だけじゃない。時空最強イレブンに選ばれた全員がその可能性を秘めている。
…だが、自分はどうだ。
時空最強イレブンに選ばれる以前に、化身すら出せない。
…俺は、宇宙に証明を残せることはおろか、俺の唯一の証明でもあるサッカーの中にも残せないという現実を突き付けられたような気がして、悔しいような、悲しいような思いが胸に込み上げ、目の奥が熱くなるような気がした。
顔を俯かせて歩みを止めたと同時に、ヒロトさんの声が再び冷たい空気を震わせた。

「確かに、宇宙の誰もが存在していたことを証明してもらえる存在になるのはとてつもなく難しいことかもしれない。けど、誰だって証明してもらえるんだよ」
「…どういう、ことですか?」

今まで聞いたことのないその続きの話に、顔を上げた。
そこには、優しい眼差しをこちらに向けているヒロトさんの姿があった。

「誰かの記憶の中に存在している。それだけでも、確かにここにいたことって証明できるんだよ」
「…矛盾、してませんか、その言葉」
「かもしれないね。でも、宇宙っていうのは、この星空くらい大きそうで、実は人独り分の大きさなんだよ」
「…はぁ。相変わらずヒロトさんの言ってることは謎すぎますよ」
「緑川にもよく言われるな、それ」

まったく、この人は…。
でも、心が軽くなったのがわかり、呆れながら笑うことができた。
やっぱり大人には敵わないなぁ。





意味がわからないですね!書いてる本人も、途中で何書いてるかわかんなくなったものなんです、はい(;・∀・)
これは姉との帰り道での実録を元にしていまして、姉がオリオン座の話をして、ヒロトならこんなこと言うんじゃね?という話になったわけです。

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