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責任取って

ベッドの上で雑誌をパラパラめくっている謙也をじっと見つめると、謙也も気付いたようで見つめ返された。うおー、見つめ合うとか恥ずかしい。
思わず目を逸らすが、すぐにまた視線を戻す。

「なんやねん。」
「……いや、別に、なんでも…」

本当になんでもないんだから致し方ない。その返答が気に入らなかったのか、謙也は俺の腕を引くとベッドに倒して髪をわしゃわしゃしてきた。

「な、にすんねん!」
「お前どんな頭でもイケメンやなー。」
「わっ…」

突然ぎゅっと抱きしめられ身体が固まる。離せと足を動かしてみたり言葉に出してみたりするが謙也は笑うだけで離してくれそうにない。
諦めて力を抜くと、さっきぐしゃぐしゃにした髪を梳かすように謙也が撫ではじめる。

「なんか、すごいイチャイチャしとるんとちゃうか?俺ら。」

謙也が楽しそうな声でそんなこと言うものだから、そしてこんな状況で否定など説得力のかけらもないから、頷くしかないわけで。

「好きやで、白石。」
「っ…な、なんやねん…」

あかん、これは。

俺は普段冷静に冷静に、と考えている。実行もできている。
だが謙也に対しては別だ。謙也はいつもド直球すぎて反応に困る。思ったことを言うだけなのだろうが俺にとっては大きいことだ。

つまり、照れる。

「照れとるん?白石可愛いなぁ。」



一回死ねばええこいつ
思ったのは本当だが本気ではない。男なのに可愛いと言われて嬉しい俺も相当おかしくなっている。
全部全部謙也のせい。謙也のせい!

「俺も、好き。」

俺をこんなんにした罪は重いで。

でもその赤い顔に免じて、半分はチャラにしてやっても構わない。








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