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かわいいきみ

「謙也、好き。」

いきなり背中に感じた、確かに、いや間違えるはずのない体温。
泣きそうなその声に、なぜか興奮してしまった。

「ここ、教室や。」
「誰もおらんし、みんな外や。」
「白石…」
「好き、好きや。」

そういや次は体育やった。
ああ、こんなんじゃさっきまでのことどうでもよくなってまう。
そもそも、なんで喧嘩しとったんやっけ。確かめっちゃくだらんことやったと思う。くだらんことで俺は白石に冷たくして、白石も俺に冷たくして
ほんまアホやんなぁ。

「ごめん、ごめんな、白石。」
「ううん、俺も、ごめん。」

白石がぽろ、と涙を零したのが分かって、自分も白石の方に向き思い切り抱きしめた。
白石が涙を流すことなんて、部活でだって見たことない。ただ、俺の前を除いては。俺にだけ見せる白石の顔は嬉しい。でも、泣き顔を見るのはやっぱり罪悪感が押し寄せる。

白石の涙、宝石、みたい。

なんて、うわ俺、なんちゅう考えを。

「けん、や」

キスをねだるように白石が俺の首に手を回した。据え膳は、食わねば。
ただこの場合の据え膳はキスまでであるから、まぁ俺の理性にかかっとるっちゅー話や。

「ん、うっ」

白石の綺麗な唇を舌でなぞればびくりと肩を震わせたのが可愛くて肩を抱いていた手を腰に移動させ引き寄せる。
顔を離すととろんとした表情の白石、の唇が俺の唾液でてらてら光って、えろいったらない。

「けん、んっ…」

もう一度丁寧になぞり、そんまま唇をこじ開け舌を侵入させる。教室で、こんなことしとるなんて、最悪、そして、最高に。

「、ん、んっ」

俺に応えようと一生懸命舌を絡ませてくる白石の髪をかきあげる様にして、手が後頭部にいくとぐいっと押し付けた。
隙間がないくらいに唇をくっつけて白石の口内を堪能する。
チャイムが鳴って、まだ白石と俺は着替えてもいないのに外では体育が始まってしまう。
いつもは真面目なはずの白石は、チャイムが鳴ってもやめようとするどころかより強く俺を抱きしめる。

こんまま教室でとか、怒るやろうか。むしろそれをしたら今の俺は1時間で、みんなが戻ってくるまでに白石との行為を終わらせることができるのだろうか。

あかん、考えれば考える程身体が熱くなってきた。今はキスに集中せな。

「ん、はぁ…」

息が苦しいかなと一回白石を離すと、俺の唇と白石の唇を銀色の糸が一瞬繋いであっという間にぷつんと切れた。

ぐったりと俺に体重預けとる白石は俺ん肩に頬を擦り寄せてきて、それにものすごいきゅうって来てしまった俺はなぜか泣きそうになる。
こう、白石が可愛すぎるのに感動?アホか。

「白石ー…したいねんけど。」
「なっ…!ここどこや思っとんねん!」
「さっき誰も来ぉへん言うて抱き着いてきたん白石クンやんかー?」
「う、う、うっさい!!とにかくあかん!」

白石は顔を真っ赤にして俺の肩を押して逃れようとする。が、俺は離したくない。

「なぁー白石クーン?」
「あ、あかん……!」

白石の腰から少しずつ手をさげ臀部を撫でる。震える白石が、泣きそうだったらいかんなと思って表情を伺おうとすると白石の顔が思い切り近付いてきた。

「しら……いっ!?」

いきなり来た衝撃に一瞬目の前がチカッと光った。頭突き、頭突きをかまされた。地味に痛い、

「いってぇえ…!」
「謙也のアホ!スケベ!!」
「ちょ、白石っ」

ジンジンと痛む額から手をどかし、白石の腕を掴むと「離せ」というようにぶんぶん腕を振る。
こんままじゃ自慢の足に一蹴りなんてことになりかねんから、おとなしく離した。
すると白石は俺があっさり離したのを予想外に思ったらしくきょとんとした顔をしてから、何か言いたそうに口をもごもごとさせる。

「白石?」
「………いま、あかんけど」

俯きながらちらちら俺の顔を見てくる白石は、ほんのり耳が赤く染まってるのを見ると恥ずかしがっているのか。やっとまともに口を開いた。

「謙也ん家なら、ええよ。」

そう言った白石が少し微笑んだのが、ほんまにほんまに天使みたいで可愛かったので、俺はなんとしてでも俺の家に白石を連れ込もう思いました!










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