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いかにめんどくさいか

※財前が結構最低




あーめんどいなぁなんて思った。めんどくさがりではあったがここまでめんどいと思うのも珍しい。あれや、疲れたときリモコンが手の届かないとこにあるみたいなのの10倍くらい、あれ取ろうか取るまいか迷ってるうちに10分くらい経ってるよなぁ。

「なにしとるんですか。」

そんなどうでもええことを考えとる俺の前には涙流した部長。

「財前、ごめん、ごめん、なぁ、」

何事やと思い部長の膝らへん見ると、CDのケース。ひび割れとるけど。
なるほどな。踏んだかなんかしたんやろう。

「ほんま、ごめん、これ、限定のやつなのに、ごめん、」

いやそこまで必死に謝られると怒るもんも怒られへんやん。別に怒るつもりもないけど。めんどいし。確かに限定のやつやけど中のCDは無事やと思う。

「別にええです。」
「でもっ、」
「ええですってば。」

ぶんぶんと首を左右に振る部長に溜息をはくとびくっと身体が震えた。俺部長になんかしたんかな。そないにビビらんでも

「部長。」
「ざいぜっ…んっ」

また何か言い出す前に口を塞いで、そんまま後頭部を押さえ付ける。こうすれば黙るのは知っとる。顔真っ赤にさせて、可愛い。

「怒ってへんから。」
「ん………」

こうやってすぐ理解してくれれば可愛いもんやけどなぁ。

「ほら、顔拭いて下さい。」
「うん。」

自分の服でがしがしと目を擦る部長の腕を慌てて止める。

「赤くなりますよ。」
「……ごめん。」

また一つ涙を零した部長の頬を舐めるとぴくんと反応する。涙はもちろんしょっぱいが部長のなら美味しいとか感じてしまうのはなんだかんだで俺が部長んことを好きやからなんやろう。

「財前…、」
「やらしい顔。」

何かを期待したその表情に、俺もまた欲情してしまう。女との行為などはめんどくさいが部長なら別に子供できんし、女みたいな反応するし。俺って最低やんな。
部長の持っていたCDをベットに投げ部長をその場で押し倒す。
それだけで俺を呼ぶ部長の声は甘いものに変わり、わずかな抵抗をされるが、好きと耳元で囁けばおとなしく俺の背中に震える腕を回した。ああ簡単すぎる人。

「ざい、ぜん……?」
「部長は俺のもんですからね。」

簡単、それがどんだけ俺を不安にさせてるかも知らんで、こっちはその不安に支配されるのもめんどいのに、

結局は部長をめんどいと思っても俺は部長と離れることなどできやしないのだ。
だとしたらこの震えた腕は、俺だけのものだと貴方に言い聞かせようか。


きっと貴方が離れていってしまうときが来たら俺は、

めんどいなんて感情が入る隙間ないくらい壊れてしまいそうやから。

そんなんは、めんどいから。




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