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弱い

がしゃん
と音がして、痛みよりびっくりしたのが大きく肩が震えた。十分冷やしたためそこまで痛くない。

「財前…ちゃんと空いたん?」
「はい。部長ピアス耳やし綺麗ですよ」

綺麗って、空けたばっかやのに綺麗もくそもあるかい。
財前の顔が近付き、頬にキスしたと思ったら冷たい耳に突然熱いものが這う。財前の舌と気付いたころには抱きしめられていた。

「あ、やっ」

財前の熱によって感覚を取り戻し始めたそこが少しジンジンと痛む。ぴちゃりと水っぽい音が耳元で響いて顔が熱くなった。

「っ……財前…」
「…部長、ほんま綺麗。ピアス空けてなんか俺のモンって感じや」

優しく微笑んだ財前に釣られて少し微笑む。ピアスごときでなんて思うが、実際財前の頼みじゃなきゃ聞かへんしちょっと前までは自分の身体に穴を空けるなど考えただけで頭が痛くなるようなことだった。
今は今で財前の頼みだからとこんなことをする自分はどれだけ財前のことが好きなのだろうと頭が痛くなりそうだが。

「俺はピアスなんてせんでも財前のもんやで…?」
「そんでも、嬉しいんすよ」

嬉しい、のか…。財前…嬉しいんや…。そう思うと、なんだか俺まで嬉しいような。

「今度、ピアス買いに行きましょ。部長シルバーとか似合いますよ」
「………財前のがええ」
「え?」
「財前のピアスがええ」

俺は財前の耳に3つ並んでついているピアスを指先で触った。
もう随分と使っているんやろうななんて思いながらそれを自分が身につけられたらどれだけ幸せやろうとか考える。若干変態くさい?

「…俺のでええんですか?」
「財前のがええの」
「………やったら、新しいピアス一緒選んで下さい、部長が選んだピアス付けるから、したら俺のあげますわ」
「…ええの?」

なんか、俺が選んだピアスつけて財前のピアス俺がつけたら交換みたいですごい、嬉しいというか恥ずかしいというか。
優しく笑った財前に、ジンジンと痛む耳と大きくなる鼓動が重なった。

「それにしても、俺がピアス空けたらみんなびっくりするやんなぁ」
「まぁ、部長真面目ですしね」
「財前のピアスつけたら、もっとびっくりするかな」
「そもそも部長がピアスなんて大体俺となんかあったって分かるでしょ」

そういえばせやなぁ。財前と俺との関係とか、いつの間にかみんな知っとったもんなぁ。
それがまた嬉しいというか恥ずかしいというか。そんな表に出てたんやろうか。

「あー財前くん、耳冷やしたいんやけどー」
「今離したくないんですけど」

ジンジンする耳の近くで、しかも低めに囁かれて声と吐息がかかる。
そうなるとなんだか頭がぼんやりとして抵抗なんてできなくなってしまう。
財前の手が腰を撫でてきて、肩が震えた。

「ちょ、財前っ!」
「したい」
「まだ昼間やで!」
「ええやん。若いんやから」

若いとか関係あらへんやろ。っちゅうかするんやったら朝シャワー浴びてくれば良かった。

「あの、シャワーとか、」
「部長の匂いがええ」

離すという選択肢が全く現れそうにない財前はもうすでに俺の服ん中に手を突っ込んで直接肌を撫でてきた。
やる気満々な財前に足をばたつかせるが本当に嫌じゃない分本気の抵抗はできひん。

「おとなしくして下さいよ」
「んっ、」

財前の唇が俺の唇と重なって、舌が隙間から侵入してくる。歯列をなぞり、舌を絡ませてくる財前に力が抜けていく。
ここで流されたら駄目だと知りながらなんかもういいかとか思ってしまって、財前の背中に手を回した。







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