*スモロー



事後注意!




ひどく抱いた、と思う。

激情に駆られた。そうなのかもしれない。

あるいは、焦燥に駆られた、のかもしれなかった。


『アンタの心臓…俺のモンにできたらな』


上半身を脱ぎ捨てたローが同じく素肌のスモーカーに跨がった。別に珍しくないのはここまでで、丁度心臓の辺りに手を当てそこを一心に見つめる。何かと思えば、ぽつり、と命令に慣れた普段の不遜な態度からは想像のできないような声でそう呟いた。

『……あ?』
『そしたら、アンタのこと……』

聞き返すも、返ってきたのはそれだけだった。享楽主義なローが言うにはらしくない。よっぽど何かあったのか。だが詮索を嫌うローにその何かを訊くのはできない。
何より先に、声が小さいというだけでなく、まるで着地点の分からぬまま飛び出たその言葉と無表情なくせに泣き出しそうな雰囲気が、スモーカーの何かを切った。





そして、今に至る。
焦りか、不安か、恐れかあるいはそのどれもか。
激情のまま抱かれたローは意識を飛ばし、冷静を取り戻したスモーカーの隣に埋まっていた。

行為中何度も繰り返し確かめるようにスモーカーを呼んだローの声が、耳から離れない。

それはやはりいつもと違い切実さを含む。何故かスモーカーまで哭きそうで、聞きたくないとばかりに口をキスで塞いだ。



もともとスモーカーとローの間には、どうしても埋められない(埋める気もない)溝があった。海軍と海賊。ローが七武海という地位を手に入れたにせよ真逆の位置にいるということは変わっていない。中でもスモーカーは人一倍七武海が海軍の味方だと思ったことはない上、海賊は海賊、と割りきっている。それを互いに分かった上で、二人は逢瀬を重ねているのだ。

もちろん誰にも秘密であり(ヒナやドフラミンゴは気づいているようだが)、他人の目の前では対立関係を創り出さなくてはならないことも少なくない。


言ってしまえば、脆く、儚く、危険な関係。

それは最初からスモーカーも分かっていた、はずだった。




ローから出された“提案”に、自分たちが綱渡りをしているという現実を改めて思い知る。

もちろんそれが提案でなくただの夢物語であることも、世間的な効力が何もないことも、分かって。




隣に寝る(正確には意識を飛ばしている)ローを見やり、葉巻をくわえる。先程の雰囲気は消えていた。そしてそのことに深く安堵する自分に苦笑した。


そのくらい、大切なのだ。どうしても。


「(海賊相手に……何やってんだ、俺は)」


そう何度も思う。
何度目かになる質問を自身にまた問いかけ、だが答えが変わったことはない。

相容れない身分だと解っているのに手離せないのは、罪なのだろうか。





「なあ、本当にやろうか、心臓」



未だ眠り続けるローから答えは返らない。



深い海の底のよう、藍色の髪に指を埋めた中将に浮かぶ表情は。









見きり発車よくないね



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