恋をしたのは、初めてだった。今までのお付き合いは、ただのお遊びだった。そう自然と思った。
同じ業界の美しいオネエサンより黄色い声援を飛ばすかわいいオンナノコより、いつの間にか影の薄いはずの彼のことを探している。まあ最初の内はいつも見つけられなかったけど。
だから黒子っちが俺の初めての告白(今までは相手から勝手に寄ってきたし)したときに、困惑から徐々に恥ずかし気なものに変えて小さく頷いたときに、心臓が止まったような、いやもしかしたらあのガン黒バスケ馬鹿(当時)と1on1した後以上のドキドキだったような、とにかく呼吸困難になるほど緊張したし嬉しかった。もしかして今まで俺に告白したあのこたちもこんな気持ちだったのかな、とか一瞬過ったものはすぐに廃棄した。俺の見た目とモデルとしての位置で判断を下したようなアイツらと一緒にできる下らない感情じゃなかった。
なのに、そんな風に言われて
ねぇ、黒子っち
やっぱり女の子の方がいいの?
分かってる?その気になれば桃っちみたいにかわいい子と一緒になれるんだよ?
でも臆病な俺は訊けないから、そんなこと。
久しぶりのデート。その中で、少し黒子っちと離れて。
あのときと同じシチュエーションになった。いや、した。あの頃と違って、自分のオーラを隠す術も、逆に引き出す術も、ちゃんと分かってるから。
わざとらしく初々しさをつくる子、ちょっとでも近づこうとしてくる子
あぁもううざったい。でももう少し。
黒子っち、どうするの?
そう思ってたら、急に腕を掴まれて、引っ張り出された。
思わず漏れそうな笑みを押し隠して
「ちょ、黒子っち、どしたの!?」
そんなこと言うけど、理由は分かってる。
俯き気味の顔が泣きそうなのも、でも掴んだ手がいつもの倍以上に(もともとそんなに強く握ってくれることはなかったんだけど)強いのも、全部気付いてるよ。
ねぇ黒子っち、嫉妬してくれたの?
まだ俺のこと、好き?
―――ごめんね、黒子っち…好き、なんだ。
―――ホントに、好きなんだ
昔黒子っちに言った言葉を、心の内で繰り返す。
そして付け足す
―――こんな風に確かめる俺が、好きになってごめんね
捧げます