「ね、すきだよ」
「あー、うん。はい」
 玉砕、本日五回目。通算にしたらもうわからん。四桁とかいってんじゃないのそろそろ。しんど。病むかもしらん。
「はいじゃなくてさあ」
「そうですか」
「敬語やめえや」
 ごろんと仰向けに寝転ぶ。ひろいシーツのはじっこの方、まだぬるまってないとこが背中にふれて、ひんやりと俺の熱をうばっていく。ちょっとずつ冷静になってくあたまとだいたいおんなじ。俺のなかの、どうしようもないけものみたいな部分が急激にさめていって、あとにのこるのは、すきなんよなあ、って、ふわふわしたやつ、だけ。おまえだってそうなんじゃないの、ねえ。そうでしょ。きいてる? つっても声に出してないのは俺なんだけど。でもいわなくたって伝わってよ、おまえお得意のその、俺のことぜんぶ見透かすみたいな目でさ。
「ん……よいしょ、っと」
 頭の上の方でなんかごそごそしてんなっておもったら、カチッて音がして、あーね、煙草ね。いいよ全然、吸ってもらって。構わんよ、構わんのだけれども、なんかその、自分だけずっと冷静でした、やれやれ、みたいな顔はさあ、どうなん、ねえ。あなたついさっきまであんあん喘いでたじゃん。俺のしたで、俺の超絶テクで、さあ。
「……なーにみてるの」
 煙に続いて吐き出された声はかすれて、へんにいろっぽかった。澄ましちゃってまあ。ほんのちょっと前まで俺に抱かれて全身びくびくさせてたの忘れてないからな。絶対忘れてやらん。
「おまえさあ、正直俺のことすきでしょ?」
「んー? んん……ふふ」
 またそうやって笑う! 俺、俺がさあ、俺がどんだけその笑顔にめちゃくちゃにされてるか、わかる? あんたのせいでぐっちゃぐちゃよ、俺のこいごころとか、情緒とか、人生とか、なんか、そう、そういう、やつ、ぜんぶ!
「やだもうおまえ、ほんと、ほんとにさあ、もう、すき」
「あは、そこはきらい、じゃないんだ?」
「すきなんだもん……そんなん言えん……」
 はいはい、って煙草を灰皿に押しつけて、悪魔みたいなひとは笑う。おまえが悪魔なんだったらこの世の聖職者とか、祓魔師とか、僧侶とか、霊媒師とか、俺が全員なんとかしてやったっていい。そういうきもちでいる。伝わってる? 伝わってんだろうな。だから俺は、どうやったって攻撃力ゼロにされちゃう「すき」をせいいっぱい無駄打ちしてられんの。ぜんぶちゃんと受け止めて、それから受け流しててよ。そしたらほら、そのうちエラーとか、起きたりするかもしんないじゃん。ねえ?


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