「アキのこと好きかもしれないんだけどさ」
ぽい、ってなんか思いつきで適当に放り投げました、みたいな、そんなかんじで言ってみたら、霧島アキはなんだか微妙な顔をした。微妙な顔でも顔が良い。なんなんだろうな。
「……『かもしれない』って、それ、面と向かって本人に言うやつじゃなくないですか?」
「つい口から出ちゃった」
「さては楠原さん貴方実は相当酔ってますね? お水飲んでください、持ってくるんで」
溜め息を吐いたアキがグラスを置いて、キッチンへ向かうべくソファから立ち上がる。だから僕はアキの腕をぐって引っ張って、ソファに引き戻してみたりなんかする。
「わ、えっ、あぶなっ。なんですか。なにするんですか」
「あは、アキ顔真っ赤じゃん。お水飲む? ほら」
いやそれ獺祭……って消え入りそうな声で言いながら、アキは綺麗な顔を両手で隠してしまう。耳まで赤いもんだからそれあんまり意味ないんだけどね。
「うそだよ」
「どれが……」
「『つい口から出ちゃった』」
「それかあ〜〜〜」
「アキどんな顔するかなあって思って」
「そんな理由で言ってみます!?」
「でも、『かもしれない』も嘘にしよっかなっていま結構前向きに検討してる」
「それ絶対もっとよく考えた方が良いですよ、絶対。霧島はそう思います」
「ねえもう単刀直入に訊くけどさ、アキって正直ぼくのこと結構好きだよね?」
「えなんで今日そんな強気なんですか?」
「引いてダメなら押してみろ」
「逆だし貴方オレに対して引きだったことないでしょう……!」
「えへ、まあね。だってアキって結構流されやすいとこあるじゃない。特にテンション上がった楠原相手だとダメだよね」
「楠原さん、性格悪いって言われませんか?」
「あのね、めっちゃ言われる」
もうやだあ……ってアキが膝を抱えて唸るのを見ながら、ぼくは、どうやってとどめを刺したらたのしいかな、なんて考えてみたりする。勝ち戦の確信は、もう十分すぎるほどにあったので。
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