ドライヤーのスイッチを切る。さらさらの黒髪を手櫛で整えて、はいおしまい。コードをまとめてたら、脚の間に座ってた恭哉が体ごと振り返って、とん、って額をおれの胸に押しつける。髪が揺れて、さっきつけたヘアオイルの匂いがした。
「恭哉? どした、眠くなっちゃった?」
 ゆるゆる首が横に振られて、はて、今日は甘えたかな恭哉。よしよし、って頭を撫でて、おかおみーせて、って、両手でほっぺたを包んで、俯いてた顔を持ち上げて、それで。
「…………なんてかおしてんの、きょーや」
 しろい肌をほんのりあかく染めて、ひとみをうるませて、きゅってくちびるを結んで。なに、ちょっとこれ、よくない。ちっちゃい声で、バカ、っていうのも、よくない、とっても。
「……っこないだ、中断した、だろ。だから今日、その……続き、とか……?」
 スウェットの腕のとこをぎゅって握られて、なんかもう、こんなん、声とか、なんもでやん。
「……棗? 気分じゃないなら、」
 なんか言ってる恭哉をめちゃめちゃ抱きしめて、喉の奥からなんとか絞り出した、すき、をつたえる。沈黙、三秒、それから。
「ふ、っはは、なんだそれ」
「ねー…………すき、きょーや、したい」
「……いいよ。そういってる」

 んで、これはさすがに想定外だけど。
 恭哉が、ちゅ、って、おれの、に。うすいくちびるで触れて、押しつけて、吸いついて。しばらく繰り返して気が済んだのか一回離して、口の中にためた唾液を、舌を伝わせて、落とす。なにそれ!?
「どこで覚えたのそんなん……?」
「……?」
 天然!? びっくりする。ほんとやめてほし……くは、ないけど、けど!
 おれの葛藤とか全然なんも知らん恭哉は、あ、ってくちをあけて、おれのを、くわえ、る。えマジ? ほんとにやんの? とか思ってるうちにあつい粘膜につつまれて、うわ、これ、ヤバ。唇でやわやわ食まれるのも、だし、視覚的な刺激がすごい。めっちゃ上手い、ってわけじゃないんだけど、でもなんか、それすらぐっとくる。恭哉ならなんでもいいんかもしれん。
「ッ、んね……そのまま、くちびるきゅってしたまま、ベロでぐりって、できる? もちょっとさきっぽのとこ、」
「……、ん……」
「……ッぁ……そ、じょーず…………」
 いーこ、って恭哉の髪に指を通して、頭を撫でて、ついでに指先でくすぐるみたいに耳に触れる。熱っぽい息が震えて、刺激が増えた。
「……ハ……あー……めっちゃきもちい……」
 思わず溢れた声に、恭哉がうれしそうに目を細める。かわい、っておもって、で、気づく。
「……きょーや、あのさあ……勃ってる?」
 つま先で、ぐ、って下着の上から押す。かたくなってる。恭哉がからだを震わせて、頬に朱が差す。
「あは……んね、くちのなか、きもちい?」
 目を伏せて、おれから視線を外して、恥ずかしそうに、でも、こくんって頷く。ねーーーかわいい、どうしよう。どうしよっか。
 照れ隠しか、いままでよりも奥に咥え込んで、ちょっと苦しそうに眉を顰めて、でもとろけた目で、恭哉が続ける。
「無理、せんといてね」
「……ん、ぅ」
 ぐーって喉まですすめて、ゆっくり頭を前後に動かす。ほんとにちゃんときいてんのかなこの子は。
 上顎と舌で締めつけながらずるずる抜かれて、またゆっくり、あつくてぬるぬるする粘膜につつまれる。あー、これ、ヤバい。
「……ン、ぁ……ね、離してきょーや、出そ、……ッ」
 抜こうとして、でもあろうことかそれよりも早く、恭哉がおれの腰に両手を回した。ぎゅーって、ホールドされる。えっ、まってなにかんがえてんの!?
「ちょ、っと……恭哉ってば……! ッ、はぁ……ねえだめ、でるって、」
「んん、んぅ」
 いやなに言っとおか全ッ然わからんけど!? 
「……ん、ぐ……ぅん、ン……」
「……ッあ、〜〜〜〜〜ッ! ……っぅ、ふ……」
 腰が震える。結局そのまま恭哉のくちに出してしまって、いや、まずいでしょ、さすがに。息を整えながら、ヘッドボードに置いてたティッシュを何枚か引き抜く。
「ごめ、恭哉、くちの、だし、て……?」
 視線を戻したら、ちょうど恭哉の喉が上下に動くとこ、で。
「は……え、ちょ、飲んだん!?」
「ん、ぁ」
 見せつけるみたいにあけられたくちの中は空っぽで、もう……もう!
「そんなんしなくていいんだって……!」
「……いやだった?」
「やじゃない、けど〜……」
「ならいいだろ」
「いい、けど……!」
「そんなことより、続き。しないの」
「んあ〜〜〜……っする、けど!」
 勢いに任せて押し倒しせば、恭哉が、ふは、って笑う。そのまま服を脱がせて、ぺた、っててのひらで恭哉の腹に触れる。一時は不健康な痩せ方をしてたそこは、まだまだ薄いし細いけど、まあ、まあまあまあ、いいでしょう、ってくらいには肉が戻ってた。ひと安心。
「棗、」
「ん?」
 あの、さ、って、恭哉は一瞬言い淀んで、息を吐いて、それからものすごい爆弾を落とした。
「ほぐしてきた、から、たぶんすぐいれられる……と、おもう」
「…………ッ、!」
 なんかもう、目眩してきた。興奮しすぎて。心臓めっちゃどくどくゆーとる。うるせえ。落ち着く時間がほしい。
「………………触ってい?」
「ん」
 指いれたら、とろー、って、溢れてきて、え、これ、ローション? 仕込んでたの? なかに? ずっと? 
「はー……ちんこ痛ってえマジで……」
「っ、はは、……俺、おまえにその顔させたかった」
「……なに、どんな顔してんの、おれ」
 すげえ不機嫌そうな声でた、ダッサ。でも恭哉は気にしてないみたいで、またちょっと笑って、首を傾げて、
「……俺のこと、今すぐ抱きたくてたまんない、って、顔?」
 だって。ぷつん、て、なにかが切れる音がした、気がした。
 舌打ちする。恭哉の肩をシーツに押しつける手に力が入る。
「……………………やさしく、するから」
 なんて、ほとんど自分に言い聞かせるためにいったようなものだった。ゴムつけて、あてがって、いれる、って、返事も待たないで腰を進める。
「……っ、きっつ」
  なか、ふわふわ。すごいこれ、めっちゃ絡みついてきて、気ぃ抜いたらもってかれそう。
「……ぜんぶ、はいった?」
「ん、もー、ちょっ、と……いけそう?」
「は……余裕」
「んねー……なんで今日そんなかっこいいの、恭哉」
「たまには甘やかしてやらないと、とおもって。……あとたぶん、テンションおかしくなってる、かも」
 おれの彼氏、かっこよすぎん?
 ぐーって腰を押しつける。ぁ、って恭哉がちいさく喘いで、うーん、やっぱかわいい。最強かもしれんおれの彼氏。
「……は、ぁ」
「恭哉、苦しい?」
「や……へいき」
「…………動いてい?」
「いいよ、すきにして」
 お許しがでたので、ゆっくり腰を引く。ぎりぎりのとこまで抜いて、また押し込む。泡立ったローションがごぽ、って音をたてて、なんか、えろいなって、頭のどこかで思う。
「……ぁ、ンん……っ」
 恭哉がしろい喉を反らせて喘ぐ。ゆるいストロークがどんどん激しくなってく自覚はあって、でもごめん、とめらんない。
「……ハ……ッ、ぁ……は、きょーや、ね、すき、っ、すき、だよ、きょうや、かわいい、すき」
 なんかもう、そんなことしかかんがえらんない。恭哉、すき、かわいい、だいじにしたい、やさしくしたい、あいしたい――……あいして、ほしい。おれのこと、ぜんぶ。
「……ッぅ、あ、な、つめ、ぇ」
「っ、ハァ……なー、に?」
「も……っむり、いく、」
 背中にぴりって痛みが走って、恭哉、我慢してんのかな、って、いとしくなっちゃう。
「んは……ッ、いーよ、おっけ」
「ン、っあ、ぁう、ふ……ッア、ぅ、んぁ、あ……、!」
 恭哉のきもちいいとこをひっかけて、えぐる。ほっそい腰が跳ねて、なかがめっちゃぐねぐね動いて、いったんだな、って、おもって、でも。
「っごめ……、もー、ちょっ、と、だけ、つきあって……っ」
「ふ、ッう、ン、んん……っァ、う、」
「ッ、あ……く、」
 快感に身を任せて、吐き出す。ゴム越しに出された感覚でも感じるのか、恭哉がまたちいさく体を震わせた。
 ずる、って抜いて、ゴムを外して、口を縛って捨てる。
 まだぐったりしてる恭哉の隣に寝転んで、ぽんぽんって頭を撫でたら、恭哉のくちびるから、はあ、って吐息が溢れた。かーわい。
「……んね、なんか今日、めっちゃきもちよかった」
「ん……俺、も」
「んは、ほんと? よかったー……」
 ちゅ、ってリップ音をたててキスしたら恭哉の口元がうれしそうにゆるんで、それみたらなんか、胸のまんなかへん、のおくのとこが、きゅう、ってなって、衝動のまま、抱きしめる。
「……棗? どうかした?」
「んーん……なんでも。落ち着いたら風呂入ろっか」
「……だるい」
「おれ連れてくよ」
「んん……じゃあ、任せた」
 りょーかい、って返事をして、シーツの上に頬杖をつく。恭哉がまだ荒い息を整えながら見上げてくるから、恭哉、すきだよ、って、いまいったらどんな顔すんのかな、っておもって、まず最初の一音の準備をしてみたり、する。

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