「ん、恭哉ねむそやね」
 膝の上で大人しくしていた男が船を漕ぎはじめたのに気がついて、読んでいた雑誌をベッドの下へと放った。よいしょ、と脱力した体を抱え上げ、掛け布団をめくって寝かせる。
 隣に潜り込めば、とろりとした瞳で見上げられた。くちびるが薄く開いていたので、かわいいなあ、とおもって、吸い寄せられるように顔を近づけた、ら、
「んん……」
 ぐずるみたいな、ふわふわした唸り声。んえ、そっぽ向かれてしまった。
「ね、ちゅーすんの、や?」
 目にかかる髪を払ってあげながら、きく。恭哉は、んー、って悩むみたいな声をあげて、それから徐にくちを開いた。声ぽやぽやだねえ。
「おまえと、ベッドで、きす、すると、」
「うん」
「はらが……なんか、きゅう、ってして、おちつかない、から」
 だから、いまは、あんまり。そういって、すり、っておれの肩口に額を押しつける。えー、なにそれ、かわいいね。
「んは、したらやめとこか。ぎゅーして寝よね」
「う、ん」
 薄い体を抱き寄せる。ほっそいなあ、もっとちゃんと食べさせんといけんなこれ。明日は肉にしよう。
「きょーや、おやすみ」
 抱きしめて、これくらいならいっかな、って髪にくちびるを押しあてる。すぐに寝息が聞こえてきたから、心のなかでもっかいおやすみをいって、おれも目を閉じる。


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