どくん、心臓が暴れる。
 指先から溶けだしてしまう。
 スウェットを上下とも剥かれて、ベッドの上に転がされて、あたまのてっぺんから足の先まですずしい視線に晒されて、そうやって、それで、それだけでもう、俺はだめだった。できあがってしまった。
「はやくない?」
「う、るさい」
「見られて興奮してやんの」
「ぁ……ぅ、る、さい、うるさい!」
「よく吠えるわんちゃん」
「……っ、ぁ、う」
「あは、マゾいねえ」
「う〜〜〜……」
 てのひらの上。どうやったって勝てない。それはそう。てか気持ちよくなってる時点でもう負け。おつかれ。
「どうすんのそれ」
 たのしそうに笑うわけ、そうやって。俺が恥ずかしいの、そんな面白いか?
「ど……う、って」
「勃ってんねって。どうすんのかなって」
 意地が悪い。意地が悪ければ趣味も悪いしそもそも性格が悪い。三重苦。最悪。
「…………」
「聞こえないけど?」
 なんも言ってねえんだよ。
「まあいいけどね」
 予定通りです、って顔でやつは俺の手をとる。仲良くおててつなぎましょうね、なんてかわいらしい理由じゃないことくらいわかる。
 俺のじゃない左手に掴まれた俺の右手が、俺の腿の間に連れてこられて、それで、俺の、に、当たる。
「っあ、ぅ」
「できるでしょ?」
「や、やだ」
「できるよ」
 最初からやれって言えよもうそんなの! 
 本気で手を出さないつもりらしい。床に座って、ベッドの上に頬杖をついて、「やりな?」って目で促してくる。俺はもう、やるか、それともこのままじりじりどろどろ溶けてマットレスに染み込んでいくかの二択で、とはいえそんなの実質一択で、やらなきゃいけなくて、じゃあ、それなら、それだったら、もう、仕方ない。仕方ない、これは。そう。
「ん……っは、ぁ」
 既にわりとぐっちゃぐちゃの下着の中に手をいれて、握る。
「あ、ん、んん、ぅ」
 なんか、もう、バグかよってくらい、先走りがだらっだらこぼれる。きもちいい。だってこちとら準備できてたんだよ、きもちよくなる準備。万端だったわけ。どっかの誰かが脱がしてガン見するから。てかいまもしてるし。そう。いま、も。見てる。現在進行形で。目が合う。あ、やば、い。
「あ、や、ぁう……っふ、う……!」
「あは、見られてんの思い出した? ぜーんぶ見てるよおれ」
「や、ぁだ、や、みんなぁ……!」
「はずかしいねえ」
 あつい。ぞくぞくする。とまんない。手も、腰も、きもちいのも、ぜんぶ、ぜんぶとまんなくて、そういうのもぜんぶ、ぜんぶ、みられて、いて。
「ぁ、あ、は、〜〜〜っ」
 からだがびくびく跳ねる。てのひらに全部でる。どろどろ。なまあたたかい。一気に力が抜ける。息が上がってる俺をみて、いっちゃったねえ、って、わらうやつがいる。最悪。最悪だよ。マジで。だるいし。頭回らないし。
「はーかわいかった」
 よいしょ、とかいってベッドの上にあがってきて、なんなら俺の上に乗り上げて、最悪だろマジで、おまえ、ほんとに。いや語彙とかいまいいから、知らない、そんなの。
「まあまあまあ。おれのせいにしていいから、ね?」
 当たり前だろバカ。全部おまえが悪い。全部、ぜんぶ。


戻る


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -