カミングアウト 1/1

〜臨也視点〜

「臨也、何回言ったら分かるかなあ、少しは仲良くできないの?毎回怪我を治療する僕の身にもなってほしいよ。」

呆れ顔で新羅がそう言った。

「シズちゃんと仲良くだなんて、考えただけで虫酸がはしるよ」

新羅のため息を聞きながら治療を受ける。
今日もシズちゃんはどこから持ってきたのか、会っていきなり道路標識を投げ飛ばしてきた。
避けられたから、かすり傷で済んだものの、でなければ死んでいたかもしれない。

一昨日はガソリンの入ったドラム缶を転がしてみたけど、全く持って無意味だった。


「話し合いで決着をつけるとか出来ないの?まあ、無理だとは思うけど。」

「多分地球がひっくり返っても無理だね。」

ハハッと笑うと新羅に笑い事じゃないと怒られた。

「全く、莉緒がどれだけ心配してるか知ってるの?」

「なんで莉緒がでてくるの…」

「この間心配だって言ってたよ?」

「ふーん、まあ莉緒には関係ないね」

「そういう風に言うのは大切な双子の妹に心配をかけたくないから?それとも君の愛する人に…かな?」

「それじゃあ、まるで俺の好きな人が莉緒みたいな言い方じゃないか」

「実際のところそうでしょう?」

さっきまでの笑みとは違う、真剣な表情だった。

「君は人間という生物を愛している。だけど莉緒への気持ちは違うよね?」

どうやら誤魔化しはきかないようだ。

「…いつから気づいてたの?」

ため息混じりにそう聞くと、新羅は先程までの笑顔に戻って答えた。

「うーん、かなり前からかな。」

「そんなに分かりやすかった?表には出さないようにしてたんだけどなあ」

「分かりやすかった訳じゃないけど、まあ長い付き合いだからね。分かるよ。」

「まさか新羅に一番はじめに気付かれるとはねぇ」

「あんまり莉緒に心配かけちゃ駄目だよ?」

分かってると答えると、新羅は本当かなと苦笑いをして見せた。


「このこと莉緒には黙っておいてね。伝えるべき時がきたら、俺からちゃんと伝えるから。」

帰り際にそう伝えると、勿論だよ新羅は言った。
新羅のことだから、言わないでおいてくれるだろう。


(でもまあ、新羅に一番はじめにばれるとはねぇ…)





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