1/1ページ
1年を締めくくる修了式が終わった教室は、クラス替えで離れてしまうことを惜しむ人たちや、春休みの予定を語る人たちで盛り上がっている。
4月から学年が1つ上がることもあり、気が緩んでいるんだろう。
そんな輪に入らず、私は窓際で咲き始めた桜を眺めていた。
「なにやってるの?1人で外なんて見て。面白いものでもあった?」
声を掛けられ振り向くとそこには学ラン姿の臨也がいた。
「桜が咲き始めてるの。もう春なんだね。」
ぼんやりと窓の外を見つめながら答えると、臨也は私の顔を覗きこんできた。
「それだけじゃ無いでしょう?そんなに悲しい顔してさ。」
「あはは、ばれちゃった?なんかこのクラスが名残惜しくてさ。」
「だったら莉緒もみんなと同じように話して来ればいいじゃないか。」
そう言って臨也はクスクスと笑う。
違うんだよ。それじゃ意味ないの。
「臨也は?寂しくないの?」
「そうだねぇ。別にさみしくないけど…」
「…けど?」
「莉緒と別のクラスになるのは嫌だな。莉緒は?」
私の言いたいことをわかってる癖に、そうやって聞いてくるんだ。
「私も…臨也と離れちゃうのは寂しいな…」
そう言うと、臨也は優しく私の頭をなでた。
「桜が満開になる頃にも一緒にいれたら良いね。」
そう彼は微笑んだ。
咲き始めの桜に願いをこめて。
back