2話

部活後、学校から少し行ったところのコンビニに寄る。
何個か買った中から目当てのものを取り出して袋を開けた。

「寄るたびそれ買ってるけど美味しい?コンビニシュー」
「おー、ここのは結構うまい」

よく飽きないね〜なんて及川に言われるけど、購買行ったら必ず牛乳パン買うお前には言われたくない。
図星を突かれたような声を出す及川をよそに他に買ったものをカバンに突っ込む。
その時あの甘い匂いがしたような気がした。
今食べてるシュークリームのじゃない、違うやつ。

「あ、よお」
「周ちゃん!」

岩泉と及川がそれぞれ口にしたのと俺が顔を上げたのは同時だった。
次の瞬間、及川は周ちゃんと呼んだ子に飛びかか…いやダメだろ、それ絶対あの女の子つぶれるから。そんな俺の心配は杞憂に終わり、及川は岩泉に叩き落された。
それにしても及川のあーゆうの初めて見た。
普段ふざけてんのかと思うほど女子に囲まれているのを見るけど、自分から行くことなんてなかったし。
何気なく松川に視線をやると、同じことを思ったのか向こうも少し驚いたような表情を俺に向け、興味を抱いた俺たちは再び及川たちに視線を移した。

『部活帰り…?だよね、お疲れ様』

及川と岩泉の間からこっちに向かって軽く頭を下げられたのが見えて、2人に続けてどーもと一言。
頭を上げた後も彼女は話しかける及川の声が耳に入っていないのか、暫くこっちに顔を向けたまま何かを考えているようだ……心なしか見られてる気がする。
ってのは気のせいじゃなかったらしい。
何か思い出したような表情を浮かべて

『お昼休みの人』

なんだそりゃ、俺この子と昼休みになんかあったっけ。
及川が吹き出した。
岩泉も松川も笑って、訳が分からないまま及川に呼ばれたから近くに行けば…あー、わかったかも。
この甘い匂い、岩泉のクラスのあれ、この子か。

「楠木、間違ってねーけどこいつ花巻な」
「あーえーっと花巻です」
『花巻くんか〜。楠木周です。よろしくね』

岩泉と及川とは中学から一緒らしい。
親しげにしていた姿にちょっと納得。

「買い出し?」
『うん、夕飯の材料足りなくて』
「あー、だからエプロン」
『え…あ、脱いでくるの忘れた!』

恥ずかしい…と慌てて開けていた上着のボタンを閉めるが少なくとも俺ら4人にはバッチリ見られている。
ただ単に脱ぎ忘れたのかも料理中に急いで出て来たのかも知らないけど、駄弁ってて時間は大丈夫なんだろうか。

『大丈夫だと思いたい…』

それとなく伝えるとまさかの願望。
なんでも仕方なく料理が全くできない弟に任せてきたんだとか。
冷や汗を浮かべる彼女にどれほど壊滅的か垣間見えた気がする。

それじゃあねと横切って行ったこの匂いはやっぱり甘くて好きだと思った。

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