捧げ物 | ナノ

 伊月:以心伝心

(※君の笑顔が見れるならの続き)


部活が終わり、着替えも終えて時計を見れば、ウィンターカップ目前で練習メニューも普段より少しハードな所為かいつもより30分近く遅かった。
あの合宿での告白以来、家が同じ方面というのもあって一緒に帰ることになった世良ちゃん。
部活が終わるまでは暇だから教室で勉強して待っていてくれる。
わがままを言えば正式にマネになってほしかったけど、勉強もあるし、何より女マネ禁止と公言したうちの部に入って叩かれる可能性も否定できなかったワケで。

お先と言って部室を出れば、黒子たち後輩からのお疲れ様ですという声とともに、日向たちからの早く行ってやれという茶化す声が聞こえた。
最近はもう夏が過ぎて暗くなるのが早くなったし、いつもより30分も遅くなってしまったから急いで体育館を突っ切って彼女の待つ教室へ行こうとすると、入口にいる彼女を見つけた。

『伊月くんお疲れ様。急がなくても良かったのに』
「ありがとう。長引いて待たせちゃったからさ」
『きっと走ってくると思ったからこっち来たのに。疲れてるんだから身体休めないと』

予想が当たったとクスクス笑った彼女に癒される。
わざわざごめんなと言えば、ううんと首を振って、体育館から教室に寄ると遠回りになっちゃうからと。
確かにそうだけど、すごく遠回りになるわけじゃないから気にしなくても良かったのにと思いつつ、そんな彼女の気遣いが嬉しくて笑みがこぼれた。
じゃあ行こうかと玄関へ向かえば、ちょうど火神と黒子と合流。

『テツヤくんにタイガーくんお疲れ様』
「春風先輩ありがとうございます」
「おう…です。あとのばさねーです」

合宿でそれなりに仲良くなったのか彼女とこの2人はよく話しているのを見かける。
けど、名前呼びなんて聞いてない。
俺だってまだ苗字呼びなんだけど…?
ってダメだ嫉妬醜い…はっ!嫉妬にダメ出ししとくキタコレ!
…違うそうじゃなくてやっぱり嫉妬くらいしちゃうよ。

2人と別れたあと何となく聞いてみたら、黒子は可愛くて弟みたいだから、火神はタイガっていう名前がかっこよくて、らしい。
うん、何て言うかすっごく少し分からなくもない。
あーでも理由はどうあれ羨ましい。
なんて思ってるうちにいつも別れる道まで来ていた。

『伊月くん』
「ん?なに?」
『えーっと、また明日ね…俊くん』
「うん、世良ちゃんまた明日…ん?」

思わずまた明日というフレーズにいつものように返したけど…すっごく小さかったけど今名前…?

「ちょっと待って!も、もう一回」
『え?』
「名前、もう一回言って欲しい」
『俊、くん…』

少し俯きながら顔を赤らめて言った彼女はすごく可愛くて。
ていうかすっごい嬉しい。

「これからも名前で呼んで欲しい。なんて」
『わ、私も名前で呼びたい…とか』

おずおずと少し顔を上げながら上目使いでなんて…
あーもう、抱きしめていい?答えは聞いてないけど。

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