捧げ物 | ナノ

 今吉:今日も今日とて相変わらず

(『結果、両者子ども』の続編)



「また懐かしいもん見とるなぁ」
『いいじゃない、何のためのアルバムよ?』

掃除をしててたまたま見つけたそのアルバム。
制服だったり、桐皇の名前を持ったジャージ姿だったり、これはさつきや青峰たちがいないから私が1年のときだからもう8年も前になるのかーなんて振り返る。
パラパラとページを捲っていくに連れて、アルバムの中の時間が進む。
若松と青峰が互いに相手の頬を抓っていがみ合ってる写真を見つければ、この写真を撮った瞬間、私も若松にほっぺ抓られたんだっけ?なんて思い出すし。

『あ、そう言えばこの頃だっけ?』
「何が?」
『翔一に普段の仕返しをしようとしたの』
「そんな頃もあったなぁ」

なーにを白々しく。
好きだったこの私にちょっかいを出して気を引こうとしてたくせに。
好きな子をいじめたくなる、精神が小学生男子だったくせに。
改めて思い出したら笑いがこみ上げてきて必死に耐える。

「ひっどい顔やなぁ」

あ、バレたか?なんて翔一の顔を見たら、その視線はアルバムの中で。
いつの間にか捲られていたそのページには、バスケ部みんなが写ってる写真があって、3年生の手にはそれぞれ筒が握られ、若松が柄にもなく涙目で。
あ、これか。なんて思ったのも束の間。
その隣には顔に赤みを帯びていて明らかに泣いた後だとわかる私が、頭に翔一の手が置かれて写っていた。

『む、うるさい。どーせこの時泣いてなかったら淡白やなーなんて言ってたんでしょ?』
「なんや、わかっとるやん」

うわー心底ムカつく。
私だって多分、若松と青峰の写真の頃のまま来てたら泣かなかったさ。
ええ、あなたの恋人になってなかったらこの写真だって私は最後の仕返しだと言わんばかりに、真後ろに標的がいるのをいいことに足を踏んだりなんなりしながら笑ってピースでもしていただろうね。
なんかそんな自身がある。

『あれ、そーいえばいつから私のこと好きだったの?』
「え、今それ聞く?っちゅーか今更すぎるで」
『だって私知らないもん。大体最初からそんな態度全くなかったし』
「いつになっても鈍いなぁ世良ちゃんは」

そんなこと聞いてるんじゃなくていつからさー?なんて聞いてみても、秘密や秘密。って。

『ホントに私のこと好きだったの?』
「アホか。ちゃうかったら結婚なんてしないわ」
『あ、うん。そうだね』

よく考えたらそうじゃん。
なんか好きって言われたわけじゃないのに気恥ずかしい。

「なに、照れてるん?」

ソファの後ろから見てる翔一には気付かれないと思って、でもやっぱりちょっと恥ずかしいのを悟られたくなくて少しだけ顔を俯けただけなのになぜバレたし。
昔からこの人は読めないし、読心術でもできるのかというくらい読んでくる。

「ふーん・・・世良」
『なに?』
「好きやで。大好き」
『は、え?ちょ』
「ホンマあいし」
「パパだめー!そらのほーが、ママすきなの!」

いきなりなんなんだ、恥ずかし死にするんじゃないかっていうほど・・・いや、もし続きがかき消されてなかったら確実に恥ずかし死にしてた。
それを遮ったのは隣の部屋で寝てた我が息子の空。
ドアを開けて叫んだかと思えば、とてててて、なんて走ってきてソファーに飛び乗ってギュッと腕を掴まれた。

「そら、おーきくなったらママとけっこ・・・?する!」

そう言って最後に「ねー?」と同意を求めるようにコテっと首を傾げるこの子はホントに天使です。
髪の色とか質とかは完っ全に翔一そっくりだけどクリックリの目と性格は似なかったみたいだ。
よかった。本当によかった。

「それはいくらパパでも許さへんよー?」
「なんでー?」
「ママはもうパパと結婚しとるから。なー?」
『え、う、うん。でもママも空のこと大好き』
「そらもー!」

ギューッと抱っこしてあげたら左ほっぺに可愛らしいちゅーをもらった。

「空、」
「んー?」
『!!』
「まっくらなった!」

キャイキャイと騒ぐ空に手で目を覆ったと思うと、いきなりキスなんてしてくるからびっくりする。

『ちょっと!』
「空、遊んだるからおもちゃ持ってき?」

コクコクと頷いて目を輝かせながら走って行った空。
なにを考えてるんだ、子どもの目の前でキキ、キスをするなんて。という意味を込めてほっぺを抓ってやった。

「いたたた」
『子どもに嫉妬なんかしないの』
「ただの独占欲や」






(あとがき)
子どもの名前はこの前ついったで話してたやつよ(笑)

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